日本ハム加藤貴之投手(27)が、故郷のために左腕を振った。

20日ソフトバンク戦(ヤフオクドーム)に先発。時折、鬼気迫る表情で強力打線に立ち向かった。3回1死二塁から今宮に中前適時打を許し「(生還した四球走者はカウント)3-2からのボールだったり、自分のミス」と猛省。だが、先制点は献上したが、後続はしっかり断った。5回を4安打1失点にまとめた。

ここ3試合連続、先発で5回を投げ、15イニングで計2点しか失っていない。持ち前のテンポ良い投球で、試合をつくる役割を果たしてきた。この日も粘り強く投げ抜いたが、味方打線の援護をもらえずチームは完封負け。自身には7敗目がついた。

いつにも増して、力が入る理由があった。9月上旬の台風15号の影響で、出身地の千葉が甚大な被害を受けた。南房総市にある実家も停電するなど、故郷を心配する日々が続いていた。被災直後の11日楽天戦では、実現はしなかったが「珍しく」続投も志願したほど。試合前、思いを行動に移した。南房総市に100万円を寄付した。「まだまだ避難している人もいる。自分が出来ることを、野球を通じてやれることがあれば」。決意を胸に投げ込んだ、今季最多の90球だった。

2試合連続の完封負けとなった栗山監督は、投手陣の頑張りを称えるしかなかった。「(相手先発)バンデンハークの状態を見たら、1点勝負になると加藤も分かっていたと思う。よく粘っていた」。試合には敗れた。だが、加藤の故郷へのエールは、力強く伝わったに違いない。【田中彩友美】