大学ジャパンのブルペン捕手から、超一流の捕手へ成り上がる。日本ハムのドラフト6位、広島文化学園大・梅林優貴捕手(21)が12日、同大の坂キャンパスで契約金2000万円、年俸700万円で仮契約を結んだ。7月に開催された日米大学野球選手権に手伝いで参加したことがプロ志望届を出すきっかけとなった強肩捕手は、プロでの成功を信じて、生まれ育った地元・広島を旅立つ。(金額は推定)

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梅林は、等身大の言葉で、プロ入りする決意を表した。「自分が一番ヘタと自覚してプロに入ろうと思っている。人一倍、練習して、変にプロ野球選手らしさを出さない。とりあえず、調子に乗らないようにしたいです」。大学4年間は中国地区大学野球連盟2部リーグでプレー。野球人生で全国大会の経験もない。7月に開催された日米大学野球選手権大会では、選手ではなく、裏方として参加。山口・岩国が会場となった試合でブルペン捕手を務めたことが、転機となった。

梅林 最初は捕れるかなと思いながら行って、捕ることはできた。プロ志望届を出そうか出さないかという時期だったので、あらためて出して、挑戦しようというきっかけになった。

試合会場と大学が近いという理由で手伝った国際大会で、プロ予備軍とも言える投手の投球を普通にキャッチングできた。トップレベルを体感したことがなかっただけに、目指す進路を決める指針にもなった。

これまで地道に野球人生を歩んできた。奨学金をもらいながら、広島市内にある実家から大学に通う。朝はガソリンスタンド、夕方以降はバスの洗車と2つのバイトを掛け持ちした。最高月収は約5万円。この日、目の前で提示された金額に「今までしてきたバイトでは、到底もらえない額でした」と驚いた。契約金で自身と妹の愛弥(あいみ)さん(19)の奨学金の一括返済を考えているという。

二塁送球は平均1・8秒台で、俊足も武器。無名の存在ながら複数球団から注目を集めていた金の卵は「大勢の人の前でプレーすることが楽しみです」と笑顔を見せた。同大初のプロ野球選手となり、期待もひしひしと感じている。「責任を持って、これからやっていきたい」。裏方からビッグなスター選手へ-。梅林が、逆転野球人生の入口に立った。【木下大輔】

○…日本ハムは今春のリーグ戦から梅林に注目していた。加藤スカウトが地元の野球関係者から情報を聞いて調査を開始。すぐに大渕スカウト部長らに報告し、その後は複数の目で視察を重ねたという。同部長は「スカウティングチームの連携プレーができた喜ばしい結果。プロ野球の中でも十分に目立つ肩」と話し、加藤スカウトも「清水や宇佐見を脅かす存在になれる。リーダーシップもあるし、捕手としての素養がある」と期待した。