ショートスターターの旗手になる。日本ハム加藤貴之投手(27)が2日、札幌市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、大幅昇給を勝ち取った。

前例のない新戦術のキーマンとして奮闘したことを評価され、2200万円増の年俸5700万円で1発サイン。来季も同じ役割を担うことに意欲的で、日本球界の革命児として新たな投手起用法を確立させることを誓った。(金額は推定)

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加藤は来季年俸を見て、思わず頬が緩んだ。「ちょっとニヤけましたね」。2200万円増の提示は、想像以上の高評価だった。

今季は開幕前に通達された新戦術のキーマンとして奮闘した。初登板となった4月2日楽天戦(楽天生命パーク)は、3回無失点で日本初のショートスターターとして結果を残した。中3日で同6日西武戦(東京ドーム)に向かい、再び2回無失点。「最初は登板間に緊張感が抜けずに投げたりして、難しかった」と振り返るが、他の投手にとっても格好のモデルケースとなる好投だった。

シーズンを通して7度、ショートスターターを担った。「成績を見ても去年もその前も、2巡目以降に打たれることが多い。短いイニングを投げるのは自分のせいでもあるし、そこを任されるのはありがたいことでもあった」。特長を生かす戦術の採用に感謝し、来季は「今年やらせてもらったショートスターターを先頭に立って、自分で頑張ろうかなと思う」と新戦術の申し子になるつもりだ。

吉村GMも「監督の戦術に対して、彼の対応はチーム全体にプラスになったと思う。加藤の果たした役割は大きい。監督はスペシャリストの特性を評価している。加藤だからできる」と最大限の褒め言葉を送った。4日からはハワイで宮西らと自主トレ予定。「走り込みを頑張ってきます。来季は1年間を通して1軍にいたい」と、今季途中の2軍落ちも反省。苦い経験を糧に、南国で体力強化し、来季のフル回転に備える。【木下大輔】

◆ショートスターター 日本ハムが編み出した投手起用の新戦術。先発投手が3回打者一巡をめどに交代して第2先発につなぐ起用法。メジャーで昨季から見られるようになった救援投手を先発で起用し、2回以降に本来の先発投手に継投する「オープナー」をアレンジした「先発投手→先発投手」という戦術だ。一般的に打者は2巡目、3巡目と対戦を重ねればボールに慣れてくると言われ、投手のスタミナも落ちる。ひと回りごとに投手交代することで被打率を抑える可能性が高まる。