ソフトバンク内川聖一内野手(37)が18日、悲運の高校球児にバットで熱いエールを送った。この日、プロアマ交流戦・JR九州戦(タマスタ筑後)に「4番一塁」で先発出場。2回の初打席でカーブを中前に運ぶと、続く3回2死一、三塁から再び強烈なライナーで中前へ先制適時打。左ひざ痛のためファーム調整を続けているが、1軍合流へ快音を響かせた。

やるせない気持ちを何とかしたかった。「何とかならないものですかね」。新型コロナウイルス感染拡大の影響でプロ野球は開幕延期だが、高校野球は選抜大会が中止に。「せっかく甲子園が決まったのに、高校球児がかわいそう」。中止決定後、ずっと心に引っかかっていた。

個人的な思い入れもあった。シーズンオフに福島で続けている野球教室の「教え子」が、センバツ出場を決めていた。21世紀枠で46年ぶりの甲子園切符を手にした磐城(福島)の上田賢(さとし)内野手(1年)だ。4年前の12月。地元の錦中1年でたった1人の野球部員の上田君は、内川の教室に参加した。チームごとの記念写真撮影。「ラッキーやな。1人だけで一緒に写真を撮れて」と内川は冷やかしながら、上田君と写真に納まった。それから4年…。磐城ナインとなった上田君は背番号「14」を手にし、19日に予定されていた開会式で憧れの甲子園の土を踏むはずだった。

晴れの舞台は、幻となった。「センバツ中止の経験が(選手の)マイナスになることもあるし、プラスになることもある。どうにかプラスにしてもらいたい。僕も甲子園には出ていないので、出られない選手の気持ちは分かるんです」。内川は「教え子」に奮起を促しながら「そのためにはまずは僕が頑張らないといけませんね」と笑った。

今季プロ20年目。希代のスラッガーは、苦難に打ち勝つ姿を福島の球児にも送る。【佐竹英治】