開幕を待つ日本ハムファンのみなさんへ。今回の「Fゼミ」の授業は「歴史」。現在、米大リーグ、カブスで活躍するダルビッシュ有投手(33)です。日本ハム在籍7年でリーグ優勝3度、日本一1度と“大エース”として黄金期を支え、私たちに投手戦の醍醐味(だいごみ)を教えてくれました。11年オフにメジャーへポスティング移籍。今も世界を舞台に、トップ選手として輝いています。

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表情は、晴れやかだった。12年1月24日、札幌ドームで退団会見に臨んだダルビッシュは、メジャー挑戦の理由を、こう語った。

ダルビッシュ 仕事というのは、倒したいとか、強い相手にぶつかっていくこと。相手の選手から、試合前からもう無理とか、打てないとか冗談でも聞こえてきて、何かフェアじゃないんじゃないか。求められているのは違う環境なんじゃないかなと。

入団2年目から6年連続2桁勝利、07年から5年連続防御率1点台。圧倒的な投球で試合を支配してきたエースが、悩んだ末に下した決断だった。

やんちゃな“問題児”は、失敗を起点に大きく変わった。05年6月15日広島戦(札幌ドーム)でプロ初勝利を挙げた高卒1年目のダルビッシュは「いろいろ迷惑をかけたので」と頭を下げた。この年2月の春季キャンプで喫煙が発覚し無期限謹慎処分に。「絶対にはい上がる。誰からも尊敬されるプロ野球選手になる」と誓った右腕は、その才能とあふれる探求心で、トップ選手へと駆け上がった。

長身から投げ下ろす剛速球に加えて、イランの血が流れる端正な顔立ちで、高校時代から注目を浴びた。器用な手先で工夫を凝らした多彩な変化球に、打者との駆け引きを計算できる制球力。長いプロ野球史でも、間違いなく歴代最強クラスのエースだった。

人を寄せ付けないオーラを放っていたが、言葉には説得力があった。表面的な発言は、しない。素直だった。胸躍る熱投の記憶を残して、大エースは世界へと旅立った。【中島宙恵】

◆ダルビッシュ有(ゆう) 1986年(昭61)8月16日、大阪府生まれ。東北高から04年ドラフト1巡目で日本ハム入団。07年に15勝5敗で沢村賞。同年から5年連続防御率1点台を記録し、09年からは2年連続で最優秀防御率に輝いた。MVP2度。通算93勝38敗、防御率1・99。11年オフにメジャー移籍。レンジャーズ、ドジャースを経て18年からカブス。196センチ、100キロ。右投げ右打ち。