ABCラジオ朝の顔で、大の阪神ファンである道上洋三アナウンサー(77)が11日に甲子園で阪神-DeNA5回戦を生観戦。同局ラジオの長寿番組「おはようパーソナリティ 道上洋三です」の名物アナが、待ち焦がれた六甲おろしや4番大山への熱い思いを観戦記としてしたためた。

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周りのお客さんから、「六甲おろし、歌われへんな」と慰められました。監督でも選手でもオーナーでもないのに、励まされた。悔しい試合でした。前半はタイガースのいいところが全部出て、後半は悪いところが全部出た。6回裏に走者が2人いて、ボーア、サンズで連続三振。あそこで追加点が取れず防戦一方になった。追加点が取れない所と抑えの藤川が不安要素でしたが、それが出てしまった。

先制点は最高の展開でした。4番大山が「照れず」にやってくれた。あのレフト線へのツーベースから試合が始まった。

大山、高山が中心にならないと、タイガースはこの先、5年も10年もないとずっと思っていた。でも昨年まで、「4番サード大山」と言われると、彼は照れながらバッターボックスに入るねん。僕にはそう見えた。ヤクルトの村上はあの若さで俺は4番だという構えをしている。三振しても知らん顔でベンチに帰ってくる。4番に照れる男が、4番に照れなくなるのを待っていた。この日は、照れずに4番を打った。今、タイガースで最も当たっているし、このまま行ってほしい。

矢野監督も本当は大山、高山を使いたいという気持ちがあると思いますが、外国人に頼らざるを得なかった。MBSですか。ABCの人間としては、一番嫌な見出しをニッカンがつけはった(笑い)。2回には大山に続き、ボーアが先制2ラン。あれぐらい、やってもらって当たり前なんです。ただ今永というエース、しかも左腕から、左中間にもっていった。エースとの対戦が続くわけではない。今後も失投を右中間、左中間にもっていけるということ。他のチームも警戒する1発になった。5、6番だと4番よりも楽に打てるので、やっぱり大山ですよ、鍵を握るのは。

六甲おろしに飢えていたんです。コロナ禍で開幕が遅れ、歌いたくても歌えない。僕も4月20日から1カ月、自宅からのリモート出演になりました。番組では、全国トップクラスの淀川工科吹奏楽部OBを中心に、「六甲おろし数珠つなぎ」という企画を設け、演奏してもらいました。教会で流れるような荘厳な響きに、リスナーから「泣きました」という反応があった。トラックの運転手は車を止めて、聞いていたそうです。「なんで泣けてくるんやろ…」と。僕もそうですが、それぐらい飢えていた。

笛や太鼓、ラッパがないのもいいもんですね。投手が抑えてベンチに戻ってくる時の万雷の拍手。1球1球のお客さんの反応が直にグラウンドに伝わっている感じがした。「西がんばれ」とか「藤川任せたで」-、そんな声はマウンドまで絶対に聞こえている。DeNA山崎は「ウワーッ」と声を上げて投げていた。今までの甲子園では分からなかった。ピンチになった時は水を打ったように静かになる。1点差の緊張感みたいなものが、今までとは全然違う。5000人足らずでも、試合なりの雰囲気になっていった。これからも応援はこのほうがいい。そう感じました。六甲おろしは聞けませんでしたが、趣の違う、大人の雰囲気で観戦できた。やはり甲子園はいいですね。

◆道上洋三(どうじょう・ようぞう)1943年(昭18)3月10日生まれ。学生時代は110メートルハードル選手としてオリンピックを目指した。65年、日大から朝日放送に入社。「ABCヤングリクエスト」などを担当し、77年から「おはようパーソナリティ 道上洋三です」のパーソナリティーを務め、今も続く長寿番組に。大の阪神ファン。