ソフトバンクのウラディミール・バレンティン外野手(36)が2回1死に日本ハム杉浦の直球をジャストミートした。打球の行方を追いながら、スタンドインを確信。「オッシャー」と気合の声を発しながら両手をパチンと力強くたたき、一塁方向へ走りだした。バックスクリーン中段まで届く、特大の6号先制ソロ。「久しぶりに完璧な手応えだった。ここ何試合かは勝利に貢献できていなかった」。3日の日本ハム戦以来、実に15試合ぶりの1発に喜びをかみしめた。

極度の打撃不振に陥っている。15日オリックス戦から5試合連続で無安打。この間、5試合で5本の併殺打も打つなど再三の好機で打てなかった。ふがいなさ、打てない悔しさが表情に出ることも増えてきた。打順は本来の4番から5番、6番と徐々に下がっていった。この日も6番指名打者での先発だった。

実績もプライドも脱ぎ捨てて、復活のために必死になった。久々に本拠地に戻ったこの日の試合前、アーリーワークに直訴して参加。若手に交じってバットを振り込んだ。また、大阪遠征の後半からは試合前の打撃練習の順番を入れ替え、普段とは違う打撃投手を打つことも試している。工藤監督は「積極的に出てきてくれている。ルーティンを変えるのは難しいところもあると思う。意欲を持ってやってくれているのはいいこと」と前向きな姿勢を評価。「タイミングさえつかめば、結果も出てくるかなと思います」と信じて起用し続けた。

バレンティンにとっては、観客が見守る前では移籍後初の本塁打になった。間隔を取りながら見つめる地元福岡のスタンドからは、大きな歓迎の拍手が鳴り響いた。苦悩を知るからこそ、首脳陣もベンチも沸いた。みんなが大砲復活を待っている。【山本大地】