熱い夏を盛り上げているのは「帝京魂」だけじゃない。「中大魂」だって #熱い巨党 を沸かせている。

巨人亀井善行外野手(38)が、9回に代打からサヨナラ打。7日に肺がんのため94歳で死去した母校・中大の宮井勝成総監督の告別式が執り行われた日に「サヨナラ亀ちゃん」が天国へ惜別の一打を送った。チームは試合のなかった2位DeNAとのゲーム差を4に広げた。

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「魂!」と言わんばかりに、亀井が気合の入った表情で打席に向かった。3-3の9回2死一、三塁。松原に代わり、代打でコールされた。ヤクルトも投手交代。5番手には右腕マクガフが上がった。高まる緊張感。観衆4950人が息をのむ中、亀井の研ぎ澄まされた魂は並じゃなかった。

亀井 1球ファウル打ったら負けくらいの気持ちで。今日は中央の総監督の告別式だったので。

恩師を思った。初球は高め150キロ直球。迷わず、バットを振り抜いた。通算8度目のサヨナラ打が、中堅手の前ではねた。告別式には行くことはかなわなかったが「世話になった宮井さんにいいところを見せられた」と天国へ感謝の一打を届けた。

プロ16年目のベテラン。現在は足の状態が本調子ではなく、1日広島戦を最後にスタメンから外れている。先発出場には時間を要するが、ベンチから、このタイミングを待っていた。中大の先輩でもある阿部2軍監督も昨年は、時には代打の切り札として、8月以降は5番に定着して優勝の立役者になった。11日の練習時、原監督が「亀井慎之助でいってもらうよ」と新たな名を授けた。亀井は「そう言われてから1打席目だった。こういう場面で打つのが仕事。10打席あったら10打席打つくらいの気持ちです」と「中大魂」を引っさげ、バットに込めた。

同2軍監督が、現役時代に愛用していた登場曲「September」が球場内に流れなくとも「慎之助コール」がなくとも、その百戦錬磨の精神は、その打席にあった。「亀井慎之助」。日本一となった02年に4度のサヨナラ打を放ち「サヨナラ慎ちゃん」と言われた大先輩に続けと言わんばかりに「サヨナラ亀ちゃん」として、首位のチームをゴールまで確実に引っ張る。「中大魂」を胸に刻みながら。【栗田尚樹】

◆「サヨナラ慎ちゃん」 巨人阿部慎之助が入団2年目だった02年、4度のサヨナラ打を放ちファンの間で定着した。お立ち台では名言「最高です!」が誕生。昨年の引退までに7本のサヨナラ本塁打を含む、球団歴代3位の13本のサヨナラ安打を記録した。