阪神2年目の小幡竜平内野手(20)がレジェンドに並んだ。

広島戦で2点先制の適時二塁打と内野安打で、2試合連続マルチ安打をマーク。新型コロナウイルス感染による選手の大幅入れ替え後、12試合連続で遊撃で先発して今季20安打とした。高卒2年目以内の選手がシーズン20安打は75年掛布以来というレアな記録。将来の正遊撃手候補の成長ぶりは大敗ゲームで希望の光だった。

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高卒2年目の若虎が「ミスタータイガース」に並んだ。3回1死一、二塁。小幡は外角低めに沈むスライダーに食らいついた。強いゴロは広島先発の遠藤の膝元を強襲して内野安打となった。8月22日のプロ初出場から35試合目、80打席目。売り出し中の男が、節目の20安打に到達した。

運も重なっていた。0-0の2回無死二、三塁の第1打席。絶好機で遠藤の速球を振り切った。飛球は試合序盤だけ右翼から左翼に吹いていた風に乗り、左中間へ。伸びる白球を、中堅手宇草はグラブに当てながら捕れなかった。19安打目はプロ初二塁打で、2点先制を呼んだ。「前に飛ばせば何とかなると思いながら積極的に打ちにいきました」。高卒2年目以内の選手がシーズン20安打は75年掛布雅之以来。チームで唯一連夜のマルチ安打で、小幡が歴史を動かした。

物語は代役から始まった。7月末に主将の糸原が右手有鉤(ゆうこう)骨を骨折。二塁が固定されないチーム状況から8月下旬に1軍初昇格した。その後わずか1週間でプロ初安打、プロ初打点…。限られた出場機会で結果を残し、糸原が復帰するまで二塁を任された。9月25日に正遊撃手の木浪がチームのコロナ禍で離脱した後は本職の遊撃へ回った。ユーティリティーを買われ、グラウンドを駆け回っている。

1軍にいる時間は無駄にしない。6日広島戦の試合前練習では井上打撃コーチ、矢野監督とともに打撃フォームの見直しを行った。打席に立つ際、前傾姿勢になる癖を修正。フリー打撃でも2人から熱視線を注がれた。主力に囲まれた1軍環境で日々研さんを重ね、ここ10試合での打率は3割6厘と好調。指揮官は「経験することが全部あいつのプラスになると思う。試合に出て、すべてをこれからの糧にしてもらえればいい」と期待の言葉を送った。

チームは前夜の引き分けから投打がかみ合わず、広島に惨敗。首位巨人を猛追どころか、振り向けば3位中日と1・5差、4位DeNAにも2差に迫られ、Bクラスの影がちらつく。それでも1軍最年少のフレッシュな力が、猛虎を再生させる。【只松憲】