阪神大山悠輔内野手(25)が今季25号となる逆転本塁打を放ち、リーグトップを走る巨人岡本に再び並んだ。

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秋晴れの青空に、大山が打ち上げる。大飛球が左中間へ距離を伸ばすにつれ、歓声の強さが増していく。着弾を待ちきれず、矢野監督が右拳を突き上げる。逆転2ラン。4番が、4番の仕事を全うして笑った。

「一番は必死さ。なんとかしようという気持ちが(結果に)つながっていると思う。技術であったり、そういうところもたくさんあるけど、必死さが一番大事かなと思います」

1点を追う5回1死一塁、2ボール2ストライク。「しっかり振り切る中でも食らいつく」。イメージを物の見事に体現した。上茶谷の内寄り低めスライダーを丁寧に強振。左中間最深部席に13連戦ラスト(1雨天中止)を飾る決勝弾を弾ませ、「この1本で勝つことができた。本当に大きな1本になった」と喜んだ。

「さあ行け、ミスター!」

8カ月前、沖縄・宜野座球場に新井打撃コーチの声が響いていた。「サードで4番を目指すんだから、そりゃあ『ミスター』しかないやろ」。現役時代の巨人長嶋茂雄、阪神掛布雅之のように、勝負強くファンを魅了する希代のスラッガーに成長してほしい-。首脳陣の果てしない期待を肌で感じているから、努力を怠る暇はない。

リーグトップの巨人岡本に並ぶ25号。68打点は自己最多76打点の更新どころか、トップ岡本に8打点差まで迫っている。球団34年ぶりの本塁打王に加え、逆転2冠王も狙える位置にいる。「チームの勝利のために必死にやっていれば、おのずと自分の結果も良くなると信じています」。地に足をつけて進化する4番に、矢野監督も目を細める。

この日は1点を追う2回、左中間二塁打で逆転劇を呼び込んだ。8回は追い込まれてパットンの内角152キロに反応し、詰まりながらも一塁線を抜いた。指揮官は「去年までは打てるポイントが少なかった。今年は逆方向のヒットが多い。球種的にも自分が狙っていない、反応で打っているところもある」と納得顔だ。

シーズン終盤、勝負どころでの快音が際立っている。それでも矢野監督は「もっともっと大きな存在になってもらいたい」と力を込める。誰もが認める「ミスター」に成長する、その日まで。周囲も、もちろん大山も、現状に満足しない。【佐井陽介】