今季限りでの退団が決まっている阪神能見篤史投手が広島石原慶幸捕手の引退試合で「魂の5球」を投じた。8回無死一塁。石原慶が打席に現れると、先発秋山から継投で登板。すべて速球の真っ向勝負だ。1球目。糸を引くクロスファイアの143キロでストライクを奪う。2球目も容赦なく内角を突く。去りゆく同い年の戦友へのはなむけは全力投球だった。

迷わず速球を投げ込んでいく。5球目。高め145キロで右飛に抑えた。「僕は真っすぐと決めていた」。1死を奪って降板。最後の対戦を感慨深げに話した。

「いろいろホームランを打たれた記憶もある。僕が先発のときから、石原はずっと先発マスクをかぶっていたし、いろんな思いを持って。同級生がいなくなるのでさみしい気持ちです」

試合前、藤川とともに、石原慶に花束を渡し「雨は石原らしいな」と声を掛けた。前日6日に自身の退団が発表されたばかりだ。タテジマ一筋16年の生活は残り2試合で終わるが、来季の現役続行を目指す。「まだ元気なので出番があれば頑張る」。石原慶との対決を終え、冗談交じりに「最後は僕の勝ち」と言った。懐へのクロスファイア2球は力がこもっていた。マウンドを渇望する左腕の意地が光った。【酒井俊作】