阪神ドラフト1位の近大・佐藤輝明内野手(4年=仁川学院)が関西NO・1をつかみ取り、大学4年間の有終の美を飾った。6日の試合で左手首に受けた死球の影響がありながらも、打撃では積極的スイングで痛烈二塁打。守備では強肩を披露し、4球団が競合したドラフト1位の素質を見せた。学生最終戦では改めて勝利の喜びを実感。いよいよ飛び込むプロの世界でも「優勝」の2文字を追い求めていく。

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佐藤輝は珍しく喜びを爆発させ、歓喜の輪に飛び込んだ。「ここで勝つためにやってきた。一番盛り上がりました。いい形で終われたと思います」。タイブレーク2イニング目の延長11回に試合が決まった。逆転サヨナラ打の大杉渉太(2年=東山)は「ちょっと怖かったです。いっぱいたたかれました(笑い)」と、佐藤輝の興奮ぶりを明かした。

手負いの状態だった。6日大商大戦で左手首付近に死球を受けた。7日には病院で治療を受け、骨に異常がないことを確認。患部にはテーピングを巻き、学生最終の一戦に臨んでいた。

それでも、素質は随所に見せた。6回先頭の第3打席。カウント3-0から内角高め直球を振り抜き、鋭く一塁線を破る二塁打。滑り込まずに二塁へ到達する快足も見せた。三塁守備ではバント処理した投手の送球を受けると、体勢を崩しながらも上体の力だけで一塁へ矢のような送球。間一髪アウトにはならなかったが、守備でも存在感は光っていた。

視察した阪神畑山統括スカウトも「ノースリーからでも積極的に打ったり(守備では)あの体勢から投げたりと。彼のポテンシャルの高さも、十分うかがえた」と、うなずいた。

学生最終打席は同点の10回1死二、三塁。4球団競合のスラッガーらしく、申告敬遠だった。苦笑いで一塁に歩いたが「勝負なので、それはどうしようもない」と納得顔。タイブレーク最終盤では、普段ではあまり見せない打球への横っ跳びも披露するなど、勝利へ執念を見せた。優勝を決めたこの試合を大学4年間のベストゲームに選び「チームで勝つことはうれしいという思いは、年を重ねるごとに思います」と、笑顔で振り返った。

試合後には少年にサインを書くなど、注目度も高まるばかり。関西NO・1の手土産を引っさげ、プロの世界に飛び込む。もちろん見据えるのはチームの優勝だ。「自分が打って活躍して(歓喜の輪に)入れれば。プロという世界でも味わってみたいと思います」。今後は寮生活を続けながら、野球部の練習に参加して準備を進める。今度はタテジマ姿の佐藤輝が、虎に歓喜の輪をもたらす。【奥田隼人】

○…息子の学生最終戦を見守った父博信さん(53)は「最高です。もう言うことないです」と優勝に安堵(あんど)の表情を浮かべた。大学4年間の成長には「チームのために頑張るところが高校の時よりもあるんじゃないかなと。勝負の厳しさや勝った喜びを本当の意味で知ったような気がしますね」。プロの姿にも思いをはせ「チームのためにここ一番で打てる選手。そういう活躍をしていれば、みんなに愛される選手になると思う」と成功を願った。

<関西地区大学野球選手権表彰選手>

▼最優秀選手 近大・大杉渉太(2年=東山)

▼最優秀投手 近大・大石晨慈(しんじ)投手(2年=近大付)

▼敢闘賞 関西国際大・武次春哉(4年=西脇工)