ド迫力! やっぱりすごいで! プロ野球の春季キャンプが1日、始まった。阪神ドラフト1位の佐藤輝明内野手(21=近大)が沖縄・宜野座で、いきなり新人離れしたパワーを披露した。屋外フリー打撃で89スイング中9本の柵越え。豪快なフルスイングで、バックスクリーン直撃の135メートル弾もかっ飛ばした。アマ球界NO・1スラッガーが非凡な実力を発揮した。

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無観客が残念すぎる。力強いスイングから放たれた打球は、センター方向へ一直線に飛んだ。ガンッ! 沖縄・宜野座のバックスクリーンに直撃。佐藤輝があいさつ代わりの特大弾を放った。推定飛距離は135メートル。キャンプ初日のフリー打撃は、89スイングで9本の柵越え。「何点かは分からないが、完璧ではないですね」。驚きの打球にも、満足しない。これぞ黄金ルーキーの輝きだった。

4球団競合の末に、猛虎の一員となった。自ら当たりくじを引いた矢野監督は打撃ケージの後ろから食い入るように見つめた。興奮を抑えきれない様子だった。「いや、やっぱり魅力ありましたね。振る力はプロの中でも十二分に通用していくものがあると、初日で確認できた。見ていて楽しみな選手」。首脳陣の熱視線にも、佐藤輝はマイペースだった。「別に(意識に)なかったです。しっかり振ることを意識してやっていきました」。言葉からもスケールの大きさがうかがえる。

バックスクリーン弾だけなく、9本の柵越えには魅力が詰まっていた。25スイング目に、体が右に泳がされながらも、左翼ポール際に大飛球を放った。「逆方向にもしっかり、特に甲子園なので、強い打球がいくのはいいことかなと思います」。惜しくもファウルになったが、本拠地の浜風は左打者にとって難敵になる。逆方向への意識の高さは、大きな武器になる。

シートノックでは左翼を守った後、本職の三塁へ。10度の守備機会を無難にこなした。今後は外野起用が基本線だが、外野、一塁、三塁用のグラブを持参。「どこを任されるかまだ分からない。どこで行くぞと言われても準備できてるようにしっかりやっていきたいと思います」と話す。三塁には大山という強力なライバルがいるが、臆することはない。

午前8時過ぎに始まった佐藤輝のキャンプ初日。代表取材に応じたのは、午後6時半だった。「疲れました。これがキャンプだと思うので、しっかりついていけるようにやっていきたいです。実戦も早く始まる。しっかり調整していけるようにやっていきたい」。4日の紅白戦では実戦デビューを予定。衝撃のルーキーから、目を離せない。【只松憲】

▽中日金子スコアラー(佐藤輝のフリー打撃に)「大学の試合でも見ているけど、実際に見てすごいスイング。逆方向にも簡単に入るし、モノとしてはすごい」

▽DeNA有働スコアラー(佐藤輝のフリー打撃に)「飛距離はすごいですし、いいパワーをしてます。天性のものがあると思う。いい打者だと思うので、これからもチェックしていきたい」

▽井上ヘッドコーチ「キャンプ初日にいきなり走るのはまずいと思って、ウオーキングにしたわ」(昨春のキャンプでは、練習前のランニングが日課。コーチも徐々に体を仕上げていくのですね…)

▽阪神藤浪「煩悩まみれでした…」(ブルペンで105球で終えるつもりが、納得いかず3球追加。108の球数に思わず)

<近年の主なドラフト最上位野手キャンプ初日>

◆97年今岡誠(東洋大)フリー打撃ではゆったり構えたフォームから、左右へライナーを打ち分けた。68スイング中柵越え7本。守備でも非凡なグラブさばきを見せ、名手だった吉田監督からの直接指導にも耳を傾けた。

◆04年鳥谷敬(早大)遊撃の定位置を争う藤本と、守備、フリー打撃と常に同じ組で行動。最後は2人だけの居残り特打も組まれた。

◆16年高山俊(明大)右手骨折のため、安芸2軍キャンプで別メニュー。掛布2軍監督から密着指導を受けた。ティー打撃直後のマシン打撃では、特に狭いスタンスでの打撃フォームに関して徹底指導された。

◆17年大山悠輔(白鴎大)新人では異例の30分特打で12本の柵越え。金本監督から「トップを深く」と助言された直後にオーバーフェンス。右膝の使い方についてのアドバイスなど、熱心に聞き入った。

◆19年近本光司(大阪ガス)主力と一緒にフルメニューをこなした。打撃練習の3カ所フリー打撃は初体験。打つ順番がわからなくなり“迷子”になる初々しい場面もあった。