出力50%とは思えない剛球がミットに吸い込まれた。阪神に新加入したチェン・ウェイン投手(35=ロッテ)が沖縄・宜野座キャンプで初めてブルペン入りした。

「(力は)50~60%ぐらいですかね。自分の感覚ではまだまだ」。いきなり捕手を座らせ、直球のみ25球。本人の感覚とは裏腹に大きなミット音が響いた。

1月14日に来日したチェンは2週間の自宅待機が明けたばかり。「プロ野球生活も長いので、やっぱり1歩1歩調整していくことが、重要かなと思っています」。例年とは異なる形でキャンプインしても調整は地に足が着いた様子で、さすが米大リーグでも活躍した投手だ。捕手の後ろから投球を見守った矢野監督は「ボールも良かったね。見てホッとした」と直接声を掛けたという。日米通算95勝の実績を踏まえ「さすがやね。ミスの幅も狭くて、ミスの確率も少ないし、再現性高いし」と胸をなで下ろした。

中日とロッテでNPB9シーズンを経験したチェンは日本語も流ちょう。ファンへのメッセージを日本語で求められると、少し考えて丁寧に言葉を紡いだ。「久しぶりに日本に帰ってきて、コロナの影響もあるんでみんな無事で、また球場にきてもらえるようにしてもらって。これからも応援よろしくお願いします」。

経験豊富な助っ人に、矢野監督は「選手が見て学べるところもあると思うし。日本語もチェンうまいんでね、伝えてくれるところもあるやろうし」と期待。チェン自身も大歓迎した。「何でも聞いてくれるというのは歓迎です。本当にいい選手が阪神タイガースにはいるので、役に立てるのであれば何でもしたい」。門戸を開放した「チェン塾」の塾長は、指揮官からこの日の「かっこいい大賞」にも認定された。

チェンは阪神投手陣が投げる姿を実際に見て、日々、その力に目を見張っている。「当時の自分よりいい選手もいっぱいいる。今後活躍してほしいなと思っています」。塾生たちがこれから、マウンドで躍動するはずだ。【磯綾乃】