首位阪神が通算1999試合目の巨人戦で逆転勝ちを決め、2位に今季最大の4・5ゲーム差をつけた。1点を追う4回、マルテのソロで追いつくと、前日13日に国内FA権を取得した梅野隆太郎捕手(29)が御礼の決勝タイムリー。得点圏打率1位の本領発揮&好リードで、首位固めの白星を呼び込んだ。チームは1分けを挟む4連勝で、貯金は今季最多の16。15日に節目の2000試合迎える伝統の一戦に弾みをつけた。

「得点圏の鬼」にとって、おいしすぎる場面だった。同点の4回2死一、三塁。梅野はフルカウントから畠の内角149キロに体をクルッと回転させた。うまくさばくと、打球はフラフラとセンター前へ落ちた。

「みんながつないで作ってくれたチャンスでしたし、何とかヤギ(青柳)の援護をしたかったので、打つことができてよかった」

決勝の適時打にも、一塁ベース上では表情は変わらない。矢野監督が「セーフティーリードはない」と表現する東京ドーム。1発逆転と隣り合わせだと自覚するから、隙は見せない。「取った後が大事」と3投手を好リードし、1点差勝利を導いた。

得点圏打率5割3分8厘は12球団断トツ。その数字は偶然では生まれない。昨オフには「若い時は2割5分は最低でも打ちたいって言っていたけど、やっぱり勝負強いバッターを目指したい」と本音を語った。「こいつやったらやってくれるっていう期待値が、ファンの見る楽しさでもあるし、プロとしてはすごいうれしいこと」。勝利のため、ファンのため。理想の姿をものにしつつある。マルテ、佐藤輝、サンズ…。重厚な中軸の後に、「恐怖の7番」がいるから、リーグトップの得点力が生まれる。

前日13日には国内フリーエージェント(FA権)の資格取得条件を満たした。「さまざまなサポートをしてくれた周りの支えがあったからこそ」と感謝。「今はチームの先頭に立って、勝つために目の前の1試合を頑張っていきたい」と決意を新たにし、1999回目の巨人戦で、ふさわしい活躍を見せた。

指揮官は「追加点もそうですし、今日はバッテリーで勝ったかなと思います」とたたえた。「守る方でも打つ方でも、大きな仕事をしてくれて助かっている」。不動の正捕手には全幅の信頼が寄せられている。

梅野の決勝打で、チームは引き分けを挟んで4連勝。貯金も今季最多の16に増やし、最高の状態で15日の「伝統の一戦」通算2000試合のメモリアルデーを迎える。「頭を取るっていうのは意味がある。全員で取れたんで。明日も明後日も『よし、いってやるぞ』と、いい形を作ってくれた」と指揮官。2位巨人とは今季最大となる4・5差。独走態勢に入るべく、残り2戦も取りにいく。【中野椋】

▼梅野が4回2死一、三塁から決勝タイムリー。得点圏打率5割3分8厘と12球団トップの勝負強さを発揮している。2リーグ分立後の規定打席到達者の最高は、85年落合博満(ロッテ)の4割9分2厘で、梅野には更新の期待もかかる。特に走者が三塁にいる場面にめっぽう強く、13打数10安打、打率7割6分9厘と打ちまくっている。