阪神マートンが自らの守備のミスもあって敗れたオリックス戦の試合後「I don't like Nohmi―san(私は能見さんが嫌いだ)」と暴言を吐いた。さらに、訳し方によっては「わざと走者を生還させた」とも取れる発言まで行った。ミーティングで緩慢なプレーを指摘されたとみられるが、優良助っ人がまさかの変貌。交流戦優勝が完全消滅したチームに、不穏な空気が漂った。

交流戦優勝が消滅した直後のベンチ裏で、衝撃の問題発言が飛び出した。試合終了後、険しい表情のマートンが報道陣に囲まれた。「前進守備でアウトを狙ったと思うが…」。4回の本塁送球について問われると、日本語も交え、吐き捨てるように言った。

マートン I don't like Nohmi―san. ニルイドウゾ。Go ahead.

訳し方によっては「能見サンが嫌いだから、二塁走者をかえした―」と言ったとも取られかねない発言。試合後の高ぶりで本意でないことを口走ったのかもしれない。それでも、冗談ではすまない言葉を並べた。

1点を追う4回表2死二塁に、問題の場面が起きた。オリックス斎藤が右前打を放つ。前進守備のマートンが捕球し、本塁へ投げた。これが高く浮き、方向も三塁方向に大きくそれた。普通に返球すれば、楽々とアウトにできる状況。緩慢な動きを突かれた形だ。この2点目は痛かった。

外野部門を担当する関川守備走塁コーチは「見たまんまでしょう。誰が見ても、というプレー。お粗末なプレーが続いている」と話した。このプレーの後には、マートンはコーチから指摘を受け、試合後の緊急ミーティングでも注意された模様だ。そのいら立ちが問題発言につながった可能性もある。打率2割3分1厘で、完全復活が見えない状態もある。その後、球団関係者は「記者に当然のことを聞かれ、皮肉で言ったようだ。能見選手が嫌いでも、相手に得点を与えたいとも思っていない。それが真意だ」と報道陣に事情を説明した。

もちろん、マートンも自らに非があることは認めている。問題発言の後には、こう続けた。「自分としてはボール(を捕球する)まで遅かったから、送球が遅れてしまった。自分のミス。しっかりライン上に投げてアウトにできたと思う」。この日の敗戦は、マートン1人が背負い込むものではない。しかしチームでひとつにまとまって戦うスポーツである以上、あまりにも不用意な発言だった。

今日10日のソフトバンク戦(甲子園)では、打撃の調子が上がらないこともあり、先発メンバーから外れる可能性が出てきた。2年連続で最多安打を記録した優良助っ人に、何が起きているのか。和田阪神が不穏な空気に包まれている。【田口真一郎】

◆ベンチがアホ 81年8月26日、甲子園でのヤクルト戦で8回に降板した江本孟紀投手が交代時期について「ベンチがアホやから野球できへん」と発言。それまでの起用法に対する不満を一気に爆発させた。球団から事情聴取を受けた江本は責任を取って退団を申し入れ、現役を引退した。

◆批判ビラ 99年8月9日、審判への暴行などで2軍降格していたダレル・メイ投手が「1軍で投げられないなら解雇してほしい」と退団を要望するビラを報道陣に配布。「彼(野村監督)は私をプロとして扱わない」などと監督批判を展開した。球団はメイを謹慎処分にし、同8月に退団が決定。