阪神ドラフト1位佐藤輝明内野手(22)が、田中将との「モノノフ対決」に完勝し、チーム5連勝&最多貯金19を呼び込んだ。「日本生命セ・パ交流戦」の楽天戦で日米179勝右腕から、4回に右前打を放つと、1点リードの6回には右中間へ16号ソロをたたき込んだ。2日続けて観戦に訪れた祖父母も大喜びの猛打賞で、交流戦最終戦の13日は両リーグ最多7勝のドラフト1位左腕早川と初対決。チームの交流戦初Vは消滅したが、豪快アーチで6連勝&貯金20締めを目指す。

決して簡単なボールではない。1点リードの6回2死。佐藤輝が膝元135キロスライダーを捉えた。「ちょっと詰まっていた」と言うが、打球は仙台の虎党が待つ右翼席中段付近に着弾した。険しい表情で首をひねる田中将を横目に、16号ソロのルーキーは涼しい顔でベースを1周。日米通算179勝のモノノフ右腕の前で会心の「Zポーズ」を決め、笑顔になった。

「日本を代表する田中投手から打てたことは、素直にうれしいです。自分の強いスイングをしてどれだけできるのかなと思って、今日はうまくいきました」

4回には147キロ直球を捉え、鋭く一、二塁間を抜いた。田中将から3打数2安打。9回先頭でも内間から中前打を放ってプロ4度目の猛打賞を決め、ダメ押し6得点の口火を切った。

初回の攻撃前、楽天生命パークに佐藤輝のホームゲームでの登場曲「吼えろ」が流れた。田中将は14年のメジャー移籍以降、自身の応援歌として制作されたももクロの楽曲を登場曲に使用している。そんなモノノフの大先輩との対決にも、規格外新人は冷静だった。

「ゲームに入れば真剣勝負なので、(モノノフ対決は)頭になかった。でもそういう注目が集まる中で打てたのは、よかったかな」

交流戦新人本塁打記録を「6」に更新。同打点も19年中川圭(オリックス)に並ぶ「12」で新人最多だ。前日も1安打1盗塁を決めたが、観戦した祖父勲さん(82)に「願わくばホームランを」とおねだりされ、佐藤輝も「ホームラン見てもらいたい」と約束していた。「おじいちゃんおばあちゃんの前で、打つことができてよかった」と最高の祖父母孝行に胸を張った。

もちろん2日続けて観戦した勲さんと祖母美智恵さん(82)も大興奮だ。勲さんは「テルのフォームと打った瞬間、角度的に見ると分かりますから。いったなと思ったら、その通りになりましたので、非常にうれしいです」と喜んだ。佐藤輝が小学1年で野球を始めてから、宮城への帰省のたびに一緒に練習し、基礎を固めた。美智恵さんが「おじいちゃんに恩返ししてるんだね」とほほ笑むと、勲さんも「教えたかいがありました」と照れ笑い。2人は近大時代の昨年10月にはリーグ記録を更新する14号や、阪神入団後は3月27日ヤクルト戦(神宮)のプロ1号を生観戦。“持ってる”祖父母が、再び孫に力を与えたような1発だった。

チームは田中将から12年ぶりの白星で交流戦8年ぶりの5連勝。貯金を今季最多の19に増やし、4年ぶりの交流戦勝ち越しも決めた。「明日もしっかり勝って帰りたいと思います!」。最終戦は両リーグ最多7勝を誇る早川との「ドラフト1位対決。もう1度、祖父母を喜ばせる。【中野椋】