杜(もり)の都の奪三振マシンが、久々にマウンドを守りきった。楽天則本昂大投手(30)が自身3年ぶり、通算30度目の完投勝利で6勝目を飾った。ソフトバンク相手に114球5安打無四球10奪三振。3度目の対戦で初勝利となった。2桁奪三振は石井GM兼監督に並ぶ通算41度目。チームを2位へ引き上げ、首位オリックスに0・5ゲーム差と肉薄した。

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守り抜いたマウンド上で、声を張った。最後の打者を打ちとった則本昂が、歩み寄る捕手太田と体を合わせ「よっしゃ!」と叫んだ。18年以来、3年ぶりの完投勝利。「9回はとにかくどんな形でも3つアウトをとって帰ろうと思っていたので、強い気持ちで投げきれました」。2日ヤクルト戦以来、本拠地では4戦ぶりの白星。地元のファンからの歓喜の拍手が心地よかった。

強打者ぞろいの鷹打線にも、臆することなく投げ込んだ。最速152キロの直球は迫力満点。落差のあるフォークにスライダー、カーブでタイミングを外した。「状態は良くなかったんですけど、丁寧に(太田)光の配球を信じて、バックを信じて、援護をもらって気持ちよく投げられました」。ソロを浴びた5回に24球を費やすも6回は10球、7回は5球、8回は13球と省エネ投球。「比較的今日は涼しかったので、そんなに疲れはなかった」と梅雨時の冷風にも背中を押された。

「3年ぶり」の枕詞(まくらことば)に、変化を感じた。19年に右肘を手術。同年、昨年とともに5勝にとどまった。昨季はセットポジションからの投球に取り組んだが、今季はワインドアップへ原点回帰。「その頃に比べれば体の出力とかは確実に落ちていると思う。それでも今の状態が一番だと思ってやっているので、自分に自信を持ってこれからもやっていけたら」。変わりゆく自身と向き合い続けながら、実績が裏付けるプライドは揺るがない。

41度目の2桁奪三振を達成し、日米通算2550奪三振を誇る石井GM兼監督が持つ記録にひとつ、肩を並べた。「並べたことはすごく光栄だなと思いますけど、まだまだ足元にも及ばないので、まだまだ勝って石井監督に少しでも近づけるようにしたいと思います」。チームの勝利のために、バットに空を切らせ続ける。【桑原幹久】