逃がした魚は大きすぎた…。球界の大ニュースと言えば球団身売り、監督交代、その次がスター選手の引退報道だろう。「空白の1日」で社会的な問題に発展した末、江川とのトレードで阪神に移籍した小林繁(10年1月に57歳で死去)は13勝した1983年(昭58)オフ、突然引退を表明した。当時トラ番2年目だった元大阪・和泉市長の井坂善行氏(66)は、シーズン中の7月、小林から引退への決意を聞かされていた。

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NHKのBSが不定期で放送している「レジェンドの目撃者」という番組をご存じだろうか。球界のレジェンドたちがスタジオ入り。目撃者たちの証言を交え、往年の名選手が回想する番組構成になっている。

私が野球担当記者時代の選手も多く出演する。可愛がっていただいた山田久志さん(日刊スポーツ評論家)の回で、一緒に阪急を担当したニッカンの先輩S記者も登場していた。

そんな私にも番組からオファーがきた。レジェンドは掛布雅之氏(阪神レジェンド・テラー)。元ニッカンのトラ番、掛布番として、目撃者の立場で出演させていただいた。放送は今年2月だったがつい最近、深夜枠で再放送された。全国各地にいるPL学園野球部の先輩後輩からも「見たよ」と連絡をいただいた。

江川騒動による「悲劇のヒーロー」を嫌った小林氏だが、もし今、健在で「レジェンドの目撃者」たちの証言を聞いたなら、どんな言葉を口にしただろうか。江川氏はすでに同番組で取り上げられている。今となってはかなわないが、聞きたいことは山ほどある。