歓喜の優勝で今なすべきことは-。広島3連覇監督・緒方孝市(日刊スポーツ評論家)が矢野燿大監督率いる阪神の優勝へ提言だ。激戦が予想されるセ・リーグ後半戦を抜け出し、歓喜のゴールを切るために重要なことは何か。【聞き手=編集委員・高原寿夫】

☆スタートダッシュが大事だ

阪神が開幕から好調だったのは他球団に比べ、戦力が整っていたからだろう。DeNAに象徴されるように外国人の合流が遅れるなど苦しんでいる中、阪神だけは予定通りの戦いができた。そこに新人・佐藤輝の貢献もあって交流戦までは他を圧倒していた。

それが交流戦辺りで他球団も戦力整備されてきた。元々、セ・リーグ6球団の力にはそれほど大きな差はない。実際に徐々に差が縮まっていると思う。それでも後半戦はこれまでの順位通り、巨人、ヤクルトとの争いになるだろう。

こわいのは巨人だ。エース菅野抜きでこの成績。やはり原監督、百戦錬磨の采配は脅威だ。ヤクルトも侮れない。村上の成長はすさまじく、青木、内川といったベテランの存在感も増してくるはず。文字通り「1戦、1戦」が意味を持つようになってくる。

そこで欠かせないのが後半戦のスタートダッシュだ。開幕は戦力的に有利だったが条件が同じになって後半戦の最初、ヨーイドン! で再びトップを走れるかどうか。優勝はすべてここにかかっている。

☆練習試合でやるべきこと

五輪の影響で誰も経験のない長い中休みになった。練習試合が予定されているが、この期間を単なる選手の調整で終えるか、それとも有効に過ごすかで後半戦の戦いが違ってくる。

ズバリ阪神が練習試合でやるべきことは細かい野球の徹底だ。外国人に大山、佐藤輝らを加えた打線が売り物なのは間違いないし、それで勝ってきた部分は大きい。同時にもう1つの特徴である機動力は今後、さらに重要になってくる。

そこを含めたエンドラン、さらには犠打、スクイズなどのサインプレーは終盤、絶対に必要になるのは間違いない。阪神ベンチも身に染みているだろうが、打つだけでは難しいのだ。

特にこれからはプレッシャーのかかる接戦が多くなるはず。そこで勝敗を分けるのはサインプレーだ。せっかくの練習試合を無駄にせず、細かいプレー、野球を徹底し、その作戦に自信を持って戦いの本番に戻っていくことが大事だ。

☆方程式の再確立

阪神の大きな強みは「勝利の方程式」が確立していたことだ。8回の岩崎、9回のスアレス。優勝するチームは打力よりもこのパターンが決まっている。

その点で心配なのが岩崎だ。打たれるのもそうだが本塁打を許すのが目立つようになってきた。これはやはり疲労で球威が落ちてきているのかもしれない。五輪ブレークの間に、もう1度調整して、復調のきっかけにしてほしい。

若い左腕の及川が頭角を現してきたのは大きい。この投手は使える。うまく勝ちパターンに加えていけるかどうか。あとは開幕時に好調だった小林が戻ってこられるかどうか。とにかくブルペンの再整備は欠かせない要素だ。(つづく)