38歳の誕生日を迎えた西武栗山巧外野手が、西武生え抜き初の通算2000安打に王手をかけた。同点の9回に一、二塁間を抜く右前打を放ち、通算1999安打。つなぐ打撃で土壇場での勝利をたぐり寄せた。4回には、チャンスで犠飛を打つチーム打撃に徹した背番号1。着実にクリメーターを刻み、54人目の大記録にあと1本と迫った。チームも2連勝を収めた。

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詰まらせながらも、打球は土の上を弾んで抜けた。栗山は9回1死一塁で、初球から仕掛ける。低めのチェンジアップは二塁山崎剛のグラブをすり抜け右前へ。スコアボードには1999度目のHランプが点灯した。2点リードを追いつかれ、漂い始めた不穏な空気を一振りで拭い去り「嫌な流れを感じないようにして、自分が突破口を開けたらと前向きな気持ちで打席に立った」と研ぎ澄まされた集中力を土壇場で発揮した。

ここまで積み上げた1999安打の中身は、すべてが完璧な当たりではない。「先っぽだったんですけど、なんでもいいからヒットでつなぐ。そういう風に教育されてきたので。ああいうのの積み重ねやと思います」。会心の当たりを求めると同時に、打ち損じの打球をいかにヒットにするかを考え、時間を費やしてきた20年だった。

「とにかくHランプを点灯させろ」。プロ入り1年目、当時就任したばかりの田辺2軍打撃コーチ(現3軍統括)に言われた言葉が、今も忘れられない。なんでもいいからヒットを打つことに闘志を燃やせと解釈。「シンプルな言葉にも、今は深みを感じています」。2000本へのカウントアップと同時に若き日の教えを思い出していた。

史上初の誕生日での2000安打達成はかなわなかった。それでも4回1死一、三塁の場面ではチーム打撃に徹し中犠飛で1点。“大人の打撃”で貢献し、安打も打ってリーチをかけた。「そういう意味では忘れられない誕生日になったと思います。明日は楽な気持ちで、しっかり自分の仕事ができるように、自分なりに勝負をかけられるように意識して頑張ります」。54人目の偉業も、栗山らしく達成するつもりだ。【栗田成芳】

▽西武辻監督(栗山が2000安打に王手をかけ)「犠牲フライも非常に大きかったしね。1本出たんで、バースデー2000本はならなかったけど、明日にも決まるんじゃないでしょうか」