どん底からはい上がった。ヤクルト今野龍太投手(26)が、1回1安打無失点で7勝目を挙げた。

53登板すべてリリーフながらチーム3位の勝ち星。今季中盤から“7回の男”として定着。終盤の緊迫した場面で持ち味を発揮し続ける。楽天を戦力外となり、ヤクルトに移籍して2年目。高津再生工場で復活した男が、1差の2位阪神から逃げるチームのブルペンを支える。

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今野は冷静だった。同点で迎えた7回に3番手として登板。2死から中前打を打たれても「勝ちゲームを投げているという意識はあまり持たず。ヒット打たれてもしっかり無失点でベンチに戻って来られるようにと」。2死一塁から、小園を内角142キロ直球で詰まらせて遊ゴロに仕留め、淡々とベンチへ戻った。打線は8回にサンタナの2点適時打で勝ち越し。7つ目の白星をつかんだ。

変わりたい。その一心だった。13年ドラフト9位で楽天に入団。故障もあって6年間で15試合にしか登板できず、19年オフに戦力外通告を受けた。その後ヤクルトに入団。「ヤクルトに来て同じこと繰り返したら、成長もしないですし、すぐクビになると思う。変わる勇気が出た」。覚悟を決めると心も軽くなり、余裕を持てるようになった。

移籍1年目の昨季は自己最多の20試合に登板。さらなる飛躍へ向け、フォークの改良に挑んだ。ブルペンでは、捕手の位置にコーンを立て、当てる練習を繰り返した。「去年とは違うことをやっていかないと同じことの繰り返し。そういうところをやっていけば勝ってる試合にも投げられる」と向上心を持ち続けた。

今季は開幕から1軍で投げ続け53試合目。防御率2・24と抜群の安定感だ。「1回クビになっているし、そんなに期待されていなかったと思う」。そこから確固たる地位を築き上げた。部員11人で臨んだ岩出山(宮城)3年時。夏の県大会初戦でノーヒットノーランを達成し、“岩出山の星”と呼ばれた。プロでもがいて8年目。優勝を争う正念場で、人一倍輝いている。【湯本勝大】

▽ヤクルト高津監督(今野について) 7勝もしてるの(笑い)。リリーフで7勝0敗は難しい。重要なところでそれだけのピッチングをしてくれているというのが、この数字に表れてるんじゃないですか。大きく成長した1人だと思います。

▽ヤクルト青木(9回2死で右翼へ7号ソロ) とにかく野手は1点でも多くという気持ちでやっている。とにかく勝つことを目指してやっているので良かったです。

◆今野龍太(こんの・りゅうた)1995年(平7)5月11日生まれ、宮城県出身。岩出山から13年ドラフト9位で楽天入り。19年オフ自由契約となり、20年からヤクルト。178センチ、87キロ。右投げ右打ち