今季限りで現役引退する日本ハム斎藤佑樹投手(33)が3日、イースタン・リーグ最終戦のDeNA戦(鎌ケ谷)で2軍ラスト登板に臨み、涙で締めくくった。6回に4番手で登板し、打者1人から空振り三振を奪って降板した。登板前から泣いていた早実の後輩、清宮幸太郎内野手(22)にもらい泣きも、最後は笑顔でファンに別れを告げた。17日オリックス戦(札幌ドーム)で引退試合に登板する予定。

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佑ちゃんは、泣いていた。6回。マウンドに立つと、一塁手の清宮が耳打ちしてきた。「楽しんで投げて下さい」。この言葉に、涙腺は決壊した。「一番、きちゃいましたね」。にじむ視界をこじ開け、必死に捕手のミット目がけて投げた。力みから2球続けてボールも「今の自分が出せる、最大限のフォーシーム」。涙を拭い2-2からの5球目。132キロで空振り三振。全球直球。万感の拍手が鳴り響き、ファームでのラスト登板を締めくくった。

斎藤 今日は僕、泣かないようにと思っていたので。ちょっと不覚にも泣いてしまったことは反省です。

登板前から涙する早実の後輩に、もらい泣きした。1日の引退発表時には、他のチームメートより一足先に伝えた。その後の練習では並んでポール間を走り、限られた時間を名残惜しむように過ごした。「絶対、来年以降はファイターズを代表するスラッガーになる」。今季は2軍で鍛錬を積む姿を、近くで見てきた。苦悩し、成長を遂げようとしている後輩に最大限のエールを送った。

苦い思い出も、涙と一緒に昇華した。鎌ケ谷は、野球人生を左右する故障を負い、もがき続けた場所。13年に右肩関節唇の損傷。今季は右肘靱帯(じんたい)断裂で完全復活を目指し、リハビリに明け暮れた。「(鎌ケ谷では)苦しんだ記憶が多いかな。逆にそれが、今となっては野球選手としてではなくて、ちょっとだけ僕のことを大人にしてくれた」と、かみしめた。

駆けつけた1379人のファンを前に、引退セレモニーでは「みなさんとの思い出は、僕の一生の宝物です」と涙なく、笑顔で言った。「心の整理は、まだですね。今日やっと、なんとなく実感しました」。引退試合は17日オリックス戦(札幌ドーム)。視線の先で、着実に近づいている最後の瞬間を、真っすぐに捉えている。【田中彩友美】