投手陣が粘って優勝へ1歩近づいた。ヤクルトは先発高橋奎二投手(24)が7回4安打無失点と好投。打線は4安打無得点に封じられたが、8回清水、9回マクガフと0封リレーで引き分け。優勝へのマジックを1つ減らし、3とした。チームは21日から神宮で広島2連戦を迎え、最短22日に優勝が決まる。連勝で、本拠地のファンの前での胴上げを実現させる。

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高橋が強気に攻めた。負ければ0・5差に縮まるマウンド。舞台は敵地甲子園。「緊急事態宣言も解けて観客が増えるのも分かっていた。アウェー感でも自分の力に変えるというか。今日は冷静に投げられた」。149キロの直球を軸に、110キロ台のカーブやスライダーなどを織り交ぜ、緩急で揺さぶった。力感が抜けて8奪三振。4回1死無走者で中野にカーブの抜け球で死球は与えたが、四球は0。ゾーンで勝負することが、好投を呼んだ。

19年は20試合で53与四球と、高橋は制球が課題だった。今季は12試合で23個に改善。今季ヤクルトに復帰した伊藤投手コーチの意識改革が投手陣を立て直した。きっかけは2月のキャンプでのブルペン。伊藤コーチは、投手陣全体にストライクを取る意識が希薄だと感じた。本拠地神宮は他球場に比べて狭く、本塁打が出やすい。「まずは投手有利なカウントを作りましょうというところから」取り掛かった。無駄な走者を出さず、早めにカウントを稼ぎ、自身を楽にする。ストライク先行をたたき込んだ。

成果は数字に表れている。チーム防御率は19年4・78、20年が4・61と2年連続でリーグワースト。一方で今季は3・37と大幅に改善された。与四球率(9イニングあたりの四球数)は昨季の3・42に対し、今季は2・53。投手陣がリズムを作り、攻撃につなげる。その投手陣をベンチから見守る同コーチは「みんな恐れずにというか、ゾーンに投げる率は上がった。それが一番大きい」とうなずいた。

なんとか引き分けるも2位阪神とは1・5差のまま。気が抜けない試合が最後まで続く。6年ぶりの優勝へ向けて、成長した投手陣の“強気”が、流れを呼び込み続ける。【湯本勝大】