巨人野上亮磨投手(34)が27日、川崎市のジャイアンツ球場で引退会見を行った。スマートでクールなイメージが先行する右腕は実は“おしゃべり上手”だ。この日の会見でも「会話力」を存分に発揮した。

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冒頭からさく裂した。

「集まっていただいた報道陣の皆様、本日はラーメンはないんですが、よろしくお願いします」

25日に引退会見をした大竹が報道陣に101杯(敗)のカップラーメンを用意したネタに触れた。

13年間の現役生活で思い出に残るシーンを問われ即答した。

「走っているところですね。高校の監督が『走ったら走った分だけ金になるから走っておけ』と」

2月のキャンプでは250球以上を投げ込む姿もあったが…。

「ブルペンは自己満なので。気持ち良く投げてました」

妻で元モーニング娘。の石川梨華との夫婦、家族の話題にもオープンマインドは変わらない。引退決断を報告は家族だんらんの食卓だった。

「ご飯を食べてるときに、奥さんと子ども2人と話をして。どうしよっかなというのを言ったんですけど『悔いがなかったらいいんじゃない』と奥さんには言われました。奥さんのおかげでここまでこれたので感謝したいです」

2人の息子もユーモアにあふれている。

「3歳と1歳の子どもたちは、マーベルのアベンジャーズにはまってるんですけど、パパは投げる仕事を続けたらいいかな? と聞いたら首を振られた。下の子はこうやって(手のひらを出して)アベンジャーズ、アイアンマンって」

リハビリに明け暮れたジャイアンツ球場での引退会見だった。目の前には見慣れた光景が広がった。

「ジャイアンツ球場は苦手だったなと。よく打たれました」

アキレス腱(けん)断裂での長期リハビリからようやく1軍復帰。その後の新たなケガで再離脱を強いられた。

「やったときは仕方ない。あとはリハビリを頑張って戻れるようにと思ったがなかなかうまくいかなかった。でも1軍の舞台で出し切ってのケガなので、それはそれで仕方ないかなと思って決断した」

その後は実戦に戻れなかった。

「投げたかったという気持ちは別にないです。ただ、今は腕を振るのが怖い。それが大きいです」

巨人での4年間はケガが続いた。

「ケガばっかりだった。ジャイアンツに申し訳ない気持ちです」

現役を終えて今後、やってみたいことは。

「とりあえず家族でディズニーランドでも行こうかなと。あとは秋の天皇賞でも買おうかなと」

ほかには。

「バイクでツーリングいってみたいなというのはありますけど。奥さんの止められているので。夏の海にいきたいです。子供たちと」

家族でカラオケは。

「最近は子どもがちっちゃいので、ひたすらアイアンマンを歌います」

西武、巨人、両球団への感謝。恩師への感謝。チームメート、友人、リハビリを支えてくれたメディカルスタッフへの感謝を何度も口にした。野上の“会話”からは一番、近くで支えてくれた家族への温かい思いがあふれていた。【為田聡史】

◆野上はプロ通算13年間で通算58勝(63敗)4セーブをマークした。神村学園、日産自動車を経て、08年ドラフト2位で西武に入団し、17年オフに巨人にFA移籍。19年10月に左アキレス腱(けん)を断裂し、長期リハビリを強いられた。今季は605日ぶりに1軍に復帰し、4月27日のヤクルト戦では1000投球回を達成した。5月18日の広島戦で右肩痛を発症。リハビリを続けたが、回復は難しく、引退を決断した。