母がウクライナ出身の中大・三奈木亜星投手(1年=浦和学院)が、大学初勝利を挙げた。リーグ戦5試合目の登板で、3回を無安打無失点。8回から抑えの西舘勇陽投手(3年=花巻東)につなぐ好救援を見せた。日大はエースの岸川海投手(4年=二松学舎大付)が1失点完投で今季初勝利。投打二刀流の山内翔太投手(2年=習志野)も3安打で勝利に導いた。青学大は児玉悠紀投手(2年=日大三)が今季2勝目を挙げた。

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母の故郷に贈る1勝だ。中大・三奈木は5回無死一塁からマウンドに上がると、強気に自信のある真っすぐを投げ込んだ。「実力がないので、まずは戦う気持ちで。ビビって投げるのではなく思い切って。気持ちだけは負けないように投げました」。体に流れるウクライナの血が、勇気を与えてくれた。

山口に住む母スベトラナさんの母国ウクライナは現在、ロシアによる軍事侵攻が続く。「(母の家族はウクライナに)残っていると聞いている。心配ですが、無事だと聞いているので」と複雑な表情を浮かべた。

かすかに記憶に残るウクライナは、楽しい思い出に包まれている。小1の時、母に連れられ1度だけ訪れたことがある。「すごくキレイなところだったという印象があります。あと、何でも食事がおいしかったです」。

その美しいウクライナの風景が、戦火で一変した。清水達也監督(57)は「お母さんも気をつかってくれて、そのことは話をしていないようです。大変だとは思いますが、本人は一生懸命に野球に打ち込んでいる」と心中を察した。母を少しでも元気に-。三奈木の1球1球には、そんな思いが込められていた。

今は野球で活躍することが、母への孝行になる。「アジアの星になれ」という思いが込められているという名前に、「今は中大の星を目指します」とほほ笑んだ。【保坂淑子】

◆三奈木亜星(みなぎ・あせい)2003年(平15)8月12日生まれ、山口県光市出身。小5で久保軟式野球に入団。中学では山口東シニアで投手兼三塁手として、中3時に全国準優勝。浦和学院では1年夏からベンチ入り。3年夏は投手兼外野手として背番号9で甲子園出場。178センチ、82キロ。右投げ左打ち。家族は両親と兄。