阪神が今季7度目の延長戦で初めて勝利した。 同点の11回表、左前打で出塁した佐藤輝の代走で熊谷敬宥内野手が出場すると、打者ロハスの打席で盗塁を仕掛けた。二塁への送球がそれ、滑り込んだ熊谷のヘルメットに当たって、センター方向へ大きくはねた。熊谷はすぐに立ち上がり、三塁も回って思い切りよくホームへ突入。頭から滑り込んでホームイン。大喜びのベンチに迎えられ、満面の笑みを見せた。 直後の11回裏、長打が出れば逆転サヨナラ負けの可能性もあった2死一、三塁では宗のボテボテの三ゴロを猛ダッシュでさばき、最後のアウトを取った。 足と守備で勝利に貢献。

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出番は緊迫した試合終盤の代走が多い。

なぜ、あれほど重圧がかかる場面でスタートを切れるのか。素朴な疑問をぶつけた時、熊谷は照れ笑いで本音を明かしてくれた。

「いやいや、震えてますよ、足。今も全然震えています」

生き残るためには勇気を振り絞るしかない、ということだ。

ナイターゲーム当日は午前10時にナイン一番乗りで甲子園へ。相手バッテリーの映像研究など一瞬にかける準備に余念がない。

「自分はポジションが確約されているわけではない。気取っていられる立場ではないので」

クールな外見に似合わず、根は熱い。

実は自称「騒がしい」前のめり系。伝説のパンクロックバンド「THE BLUE HEARTS」を好んで聴くタイプだ。新型コロナ感染が拡大する前は車で突然熱唱して、後輩の小幡を何度もあぜんとさせている。

「本当はグラウンドでも、もっとガッツポーズをしたい。アウトを取った時も、盗塁を決めた時も、ヒットの時も。でも、なんせ試合に慣れていないので、どうしても照れてしまって…」

そう悩みを吐露していた背番号4。走って守って準備が実った夜。久々に感情をむき出しにできた。【遊軍=佐井陽介】

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