昨年8月のリトルシニア日本選手権で青森山田リトルシニアは、東北アマチュア野球初の日本一に輝いた。日刊スポーツ東北版は、中條純監督(30)にインタビュー。春の東北大会4強となった青森山田の3年生29人中、約半数の15人が同シニアの出身。高校野球でも存在感を放つ同シニアの強さの秘密に迫った。【取材・構成=濱本神威】

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「しつこく、細かく、あきらめない」にこだわる。昨年8月、東練馬リトルシニアとの日本選手権決勝は2回で0-5と劣勢。そこから逆転し、10-5で日本一に輝いた。高校の青森山田は、春の東北大会1回戦でタイブレークを制し、準々決勝も延長戦勝利。リトルシニアを15年から指導する中條監督が抱く“ゾンビ青森山田”の精神は、中高両方に根付いている。

粘り強さの要因は2つ。ひとつは“練習量”だ。中條監督は「技術的なところが負けていても『ここだけは負けない』『俺たちはこれだけやってきたんだ』というのを持たせてあげようと思ってやってきました」。練習は、火~日曜の週6日で、平日は午前6時半~8時と午後4~7時。「(練習の)質はもちろん大切ですが、黙っていてもうまくなるような練習量を確保しています。控え選手であろうとうまくなっている、レベルが上がっていることを体感してもらいます」。「これだけ練習してきたんだ」という自信が選手の負けん気を生み出している。サポート体制も万全だ。練習量が多いとその分、けがのリスクも高まるが、トレーナーと接骨院の先生が1週間に1回往診。治療や疲労を取り除いており、野球を3年間思いきりできる環境づくりに余念がない。

もうひとつは“チーム力”だ。中條監督は「多くの時間を共有して、たくさんのことを経験する。日本中どこにも負けない最大の武器。そこから生まれるチーム力は絶対に負けないです」と、最大の強みとしてチーム力を挙げた。「朝6時半から一日中、この子たちは一緒にいる。『この仲間と何とか勝ちたい』という思いが強いと思います」。チームの結束が負けん気を増幅し、監督も長い時間を選手とともにすることで、さらに結束を強めている。試合前の練習では打撃投手を務め、誰にも譲らない。「去年の日本選手権では7日間毎朝投げました。できる限り一緒にやっています。まだ30なので(笑い)」。そんな指導者の姿に、昨年から主力として活躍する菊池伊真内野手(3年)は「情熱があって、一番自分たちのことを考えてくれています。食トレで最後まで一緒に付き合ってくれたりする、とても頼りになる監督です」と信頼。中條監督は「小学6年生の段階で親元を離れて野球をやるんだと、覚悟を持って青森山田に来た子たち。私も生半可な気持ちでは務まらないと思っています」。真摯(しんし)に向き合う姿勢が強固な信頼関係を築き、どこにも負けないチーム力を形成している。

チームは東北大会を制し、リトルシニア日本選手権(8月2~7日)に出場。さらに硬式野球の中学年代クラブチーム日本一を争う「ジャイアンツカップ」(同15~19日)の出場権も獲得した。同選手権連覇、同カップ制覇に向けてチームの仕上がりは上々だ。中條監督は「今のチームは昨年、日本一の光景を見せてもらった。日本一を取りたいという思いがとても強く、パワーがあり、勢いがついたら止められない子たち。良い方向に行ってくれれば今回の全国大会もすごく期待できる。2連覇も見えてくると思います」と期待を込めた。

青森山田の躍進にも期待する。今年の青森山田の3年生は、中條監督が小学6年生から見てきた選手たちだ。中條監督は彼らに向けて「私が初めて生徒募集から携わった代です。甲子園は彼らの夢で、僕の夢でもある。甲子園で活躍している姿を見たいという思いで6年生の時に声をかけ、迎えている。頂点に1歩でも近づいてほしい」と激励した。日本選手権、ジャイアンツカップ、そして今夏の高校野球と「青森山田野球」の快進撃が始まる。

◆中條純(なかじょう・じゅん)1991年(平3)7月17日生まれ。神奈川・横須賀市出身。小学2年、郷成ボスターズで野球を始める。中学では横須賀スターズで軟式野球、横浜創学館-青森大。小中高大で主将を務めた。青森大で2年間コーチ、15年から青森山田リトルシニア監督。U15ワールドカップ(8月26日~メキシコ)出場のU15日本代表コーチに選出。