日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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プロ野球にとって正念場の後半戦になる。日本野球機構(NPB)とJリーグが合同開催してきた「新型コロナウイルス対策連絡会議」が、8月1日で60回目を数えた。

第1回の会合は20年3月。「アベノマスク」を供給した安倍晋三、緊急事態宣言を繰り返した菅義偉、「経済との両立」を推し進める岸田文雄と、めまぐるしく首相も顔を変えた。

また、Jリーグの責任者だったチェアマンは村井満から野々村芳和に、NPBコミッショナーの斉藤惇が退任し、12月には元経団連会長だった榊原定征がその任に就く。

19年に中国・武漢市での発症が原因とされる新型コロナウイルス対策にあたった“主役”たちが続々と代わったことには、隔世の感がある。時が経っても変わらないのが“コロナとの戦い”だ。

この日、感染拡大し続ける状況を受けた会議後の会見で、チェアマンの野々村は「ウィズ・コロナ、アフター・コロナに向けてすごく重要な局面だと思う」と踏ん張りどころを強調した。

コミッショナーの斉藤は、当初から「国難」と言って対策にあたる姿勢を示してきた。開幕延期から無観客、試合数削減、入場制限、オールスター、交流戦中止、延長戦ゼロなど、その都度、対応を続けた。

しかし、今年7月初旬の会見で「ほとんどの球団において感染者は収まってきている」と語った途端に、複数チームから感染者が続出したから予断は許さないということだろう。

感染症専門家の賀来満夫(東北医科薬科大)、三鴨広繁(愛知医科大)らからは、遺伝子解析でオミクロン変異株(いしゅ)BA・5が複数パターン存在、チームに感染しかねないと複雑化の実態が明かされた。

経営的ダメージを受けた球界が行動制限をかける気配はない。現時点で143試合をやり遂げるのは12球団の共通認識。それがこの会議で知見を積み重ねた実績となって、来季にもつながっていくからだろう。

7月の12球団オーナー会議後、議長の山口寿一(巨人オーナー)は「世界も日本も感染者が増えても大きな社会的な行動制限はせずに対応していく方向に向かっている。緻密に対応していきたい」と語った。

いまだ“第7波”のピークも、異例の合同会議のゴールも見えてこない。まだまだ油断ができないということだけは、間違いがなさそうだ。(敬称略)