オリックスが0差でぶつかった10日のソフトバンクとの首位攻防戦第1ラウンドに勝ち、今季129試合目で初めて単独首位に立った。先発山本由伸投手(24)は7回2失点でエースの仕事をこなした。「ここからが本当の勝負どころ」と気合満点でマウンドに上がった大黒柱の熱投で、昨季王者が連覇へ頭ひとつ抜け出した。

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味方のミスにも動じなかった。エースは焦りのない平常心の投球で、試合を組み立てた。

「絶対に落とせない試合だったので、試合前からいつもより緊張感があった。落ち着くことを心がけてマウンドに上がりました」

出ばなをくじかれたが、立て直した。初回無死一塁から、周東のバントを捕手の若月が一塁に悪送球。直後、牧原大の遊撃内野安打で1点を失うも、堂々とマウンドに立ち続けた。4番柳田からフォークで空振り三振を奪い、1死満塁のピンチでは柳町を一併殺。最少失点で切り抜け、若月とグラブタッチを交わし「1失点で粘っていけば、絶対、追い越してくれるだろうな」と打撃陣を信じた。

7回111球4安打2失点(自責1)の好投で、リーグトップを走る13勝目。最速158キロを計測するなど9三振を奪い、計181奪三振もトップ。防御率1・80も先頭を走り、2年連続の「投手4冠」が視界に入った。

エースはしびれるマウンドを、心から楽しむ。悲願Vを達成した昨季。絶対に負けられないシーズン最終戦の10月25日楽天戦(楽天生命パーク)で完封勝利を収め、仙台の夜空にほえた。あの感動から、1年-。「もう、忘れちゃいましたよ!」と謙遜して笑う。過去は振り返らない。見据えるのは「連覇」だけだ。

エースの奮闘で、今季129試合目にして初の単独首位に浮上。貯金を再び今季最多タイの8とした。中嶋監督は「これが最後の試合だったらうれしいと思いますけど、まだまだ(順位が)詰まっている状態。1勝1勝していくだけ」と強調した。

残りは14試合。お立ち台で、24歳は言った。「ここまで優勝争いできていることをすごく幸せに感じます。残り試合、全力で戦い抜きます」。夢は見るだけじゃつまらない。かなえるものだ。【真柴健】

○…主砲の吉田正が、一振りで雰囲気を変えた。同点の3回2死から右翼5階席へ特大の決勝15号ソロを突き刺した。選手会長のスイングで今季初の単独首位に浮上したが「最後までどうなるか分からない。ここから大事な戦いになる。選手もみんな1勝を目指して必死にやっている」と勝ってかぶとの緒を締めた。

▼オリックスが開幕日以来の首位に立った。5月11日時点のオリックスは首位楽天から11・5ゲーム差の4位。2桁ゲーム差離されていたチームが首位に立つのは16年日本ハム(11・5差)以来16度目で、オリックスは初めて。5月12日からのオリックスは52勝38敗1分け、勝率5割7分8厘。7割以上の高勝率をマークして追いついたチームが多い中、91試合をかけてじわじわ詰めてきた。2桁ゲーム差を逆転した過去15度のうち優勝は7度で、V逸の方が多い。ただし、オリックスのように前年優勝チームが逆転したケースは、過去5度のうち89年西武を除き連覇している。

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