秋季練習まっただ中の巨人で「川相塾」が開講した。来季、1軍総合コーチに就任する川相昌弘ファーム総監督(58)が「どんぐり」や「板グラブ」を使ったユニークな練習法で指導。今季、失策数が82個とリーグワースト2位だった守備面を基礎から見直し、来季のV奪回へ秋から土台づくりに着手した。

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庭に落ちたどんぐりをかき集め、トゲをむしり、タオルで丁寧に拭いた。「家でどんぐりオヤジと呼ばれてるよ」と川相コーチ。送球が課題のウォーカーのために提案した「どんぐりスロー」に使うためだった。

ボールなら腕振りだけでなんとなく前に投げられるが、小さく軽い物を投げる際はより手首のスナップや指のかかり具合を意識しなければ正確に飛ばない。その感覚を養うためだった。

川相コーチ こま回し、メンコ遊びもそう。物体にうまく力を伝える動作には共通点がある。反らせた手首をキープして最後にしならせるから力が出る。遊びでヒントを得てくれれば。

捕球面しかない平らな「板グラブ」を使った練習も取り入れた。

川相コーチ 普通のグラブだと楽をしてシングルやグラブの先で捕っちゃう。でも板グラブだと足を運び体の正面で捕って、逆の手を上からかぶせないと捕球できない。秋だからこそ捕球の基本からやっている。

正面捕球で失策の確率を減らす。グラブ面を前に押し出すように捕球し、スムーズに送球動作に移行する。この2点を体にしみこませることが目的。岡本和も「足を使うようになるし、前で捕ることで次の投げる動作につながる」と前向きに取り組んでいる。

現場を離れた19~21年、練習メニューを研究。「板グラブ」はメジャーのブレーブス三塁コーチ、ロイ・ワシントン氏(70)の動画を参考にした。「高校生でもプロでも練習する根拠が必要」と自ら体系化した練習法をノートにまとめた。今季4位に終わった巨人。V奪回へ「川相塾」が鍵を握りそうだ。【三須一紀】

 

◆巨人のユニーク練習法 16年秋季キャンプでは、中心の1人が半径約10メートルの半円に広がった9人と素早く、ケンカのようにボール回しする「ケンカボール」を尾花投手コーチが発案。足を使い送球する意識を植え付けた。20年春季キャンプではゴルフボールサイズの球でティー打撃。長嶋第1次政権だった79年秋、若手のみが参加した「地獄の伊東キャンプ」では、オートバイのモトクロス競技ができる丘陵を何周も走るハードトレが敢行された。