阪神が藤浪晋太郎投手(28)のメジャー挑戦を容認する方向で調整していることが14日、分かった。チームはクライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージで王者ヤクルトに0勝4敗(アドバンテージ1勝含む)で終戦。球団は来週中にも本人と話し合いの場を持ち、今オフのポスティングシステム使用を認めるとみられる。最速162キロを誇る大器が、大リーグ移籍に向けた準備をいよいよ本格化させる。

   ◇   ◇   ◇

原口が空振りし、地面に右膝を突く。ヤクルトナインが一塁ベンチから一斉に飛び出す。4年間に渡った矢野阪神のラストゲーム。それは藤浪にとっても節目の一戦となった。この日、球団が背番号19の今オフのメジャー挑戦を容認する方針が判明。すでに新監督に内定している岡田彰布氏の承諾も取れているとみられ、大リーグ移籍に向けた準備がまもなく本格化する。

今季は2年連続で開幕投手を任され、16試合登板で3勝5敗、防御率3・38。最速162キロと150キロ前後のスプリットを最大の武器に、完全復調の気配を漂わせた。制球難の克服も印象づけ、8月以降はレギュラーシーズン先発7試合のうち6試合でクオリティースタート(6回以上、自責点3以内)を達成。そして9月28日、ポスティングシステムを使用してメジャー挑戦を目指す意思を正式表明していた。

すでに球団とは昨年12月の契約更改交渉から複数回の話し合いを終えている。阪神百北球団社長は9月28日時点で「タイガースにとって大事な戦力。結論を出したわけではございません」と強調しながらも「彼の強い意思、憧れは十分届いています」と一定の理解を示していた。長年の苦悩と努力を知る球団側には「夢を後押ししてあげたい」と願う機運も高く、目立った障壁は見当たらない。

チームはCSファイナルステージで王者ヤクルトに0勝4敗と完敗し、この夜をもって22年シーズンに幕を下ろした。藤浪自身は前日13日の同ステージ2戦目に先発し、3冠王村上に技あり2ランを浴びるなど3回2失点で降板。このマウンドが背番号19のタテジマラスト登板となる可能性は極めて高い。

球団は来週中にもあらためて本人と話し合いの場を持ち、今オフのポスティングシステム使用を認める方針を伝えるとみられる。「大リーグは野球の最高峰。若いうちに挑戦したい。基本的に自分の気持ちは変わらないので、しっかり伝えたい」と熱意を明かしていた藤浪。太平洋横断がいよいよ現実味を帯びてきた。

◆ポスティングシステム 海外FA権取得前の選手が、大リーグへ移籍できる制度。日本野球機構(NPB)を通じて大リーグ機構(MLB)に、契約可能選手として通知される。以前は入札が行われていたが、現在は譲渡金支払い意思のある全球団と交渉できる。日本選手では00年オフにイチロー外野手(オリックス)が初めて申請し、マリナーズ移籍。阪神では06年オフに井川慶投手がヤンキースへ移籍した。19年オフの菊池涼介内野手(広島)、20年オフの菅野智之投手(巨人)西川遥輝外野手(日本ハム)のように、交渉が成立せず残留するケースもある。

【関連記事】阪神ニュース一覧>>