目覚めの1勝だ。ソフトバンク藤井皓哉投手(26)が6回1失点の好投で4月9日西武戦以来、約1カ月ぶりの3勝目を挙げた。2-1の4回1死一、二塁で万波、江越を直球で連続三振。直前に斉藤和巳投手コーチ(45)からカツを入れられ、一気にギアを上げた。前回敵地で負け越した日本ハムに2勝1敗。勢いそのままに、12日からは首位オリックスとの3連戦(京セラドーム大阪)に挑む。

マウンドに、緊迫した雰囲気が漂っていた。2-1の4回1死一、二塁。先発藤井が一打同点のピンチを迎えた。斉藤和コーチは険しい表情で右腕に歩み寄り、猛ゲキを飛ばした。「調子がいい、悪いなんて関係ない。マウンドに上がっている以上は自信を持って投げろ。ど真ん中で勝負してこい!」。苦しむ藤井にカツを入れた。

ギアを上げ、開き直った。右腕は万波を151キロで空振り三振。続く江越には外角低め、152キロで見逃し三振に仕留めた。6回4安打1失点。直近2試合は5回途中降板。“鬼門”のイニングを乗り越えた。藤井は「(斉藤和コーチの)一言があったからが全てではないですけど、しっかりゾーンで勝負できた要因かなと。気持ちを入れ替えてできたので助かりました」と、ホッとした様子だった。4月9日西武戦以来、約1カ月ぶりの白星、今季3勝目を手にした。

試合の流れを左右するピンチは、自慢のストレートで乗り切った。最速150キロ後半に迫る直球は何より自信がある。開幕前の2月26日。WBC侍ジャパンとの壮行試合に先発し「どんだけ直球走るん?」と、マウンド上で思わず笑った。先発転向1年目だが、藤井にはうなるストレートがある。

試合を終えた右腕は「粘りです。粘り」とクールに言った。「まだまだ先発投手として足りないことがたくさんある。まずは長いイニング投げ、リズムよく投げる。日々成長できるようにしたい」。中継ぎから転向した未来のエース候補の活躍で、前回敵地で負け越した日本ハムに2勝1敗。12日からは首位オリックスとの3連戦に挑む。藤本博史監督(59)は「この勢いで。オリックスは一番たたかなくちゃいけないチーム。何とか先制点を取っていい形で試合をしたい」と手綱を締めた。【只松憲】