阪神の高卒ルーキーが大器の片りんをのぞかせた。ドラフト2位左腕の門別啓人投手(19)がプロ初先発で5回7安打無四球無失点と堂々の投球を披露した。プロ初勝利は逃したが、今後の期待が膨らむ内容。チームは広島に敗れたが、岡田彰布監督(65)は「来年の楽しみやんか」と快投を喜んだ。

   ◇   ◇   ◇

門別の表情には、自信がみなぎっていた。15日にプロ初登板で3回3失点とホロ苦デビューを飾った同じ敵地での広島戦。コーチや先輩投手らの助言を受け、2週間前の反省を踏まえて「真っすぐで押していく」と決意。2位死守へフルメンバーで臨んできた相手に最速149キロの直球で右打者の内角をえぐるなど臆せず投げ込み、5回無失点で大器の片りんをみせた。

「無失点で終われてよかったです。もっと真っすぐを磨いていけば、もっともっといいピッチングができると思う。今日はすごく自信につながりました」

ピンチでも落ち着き払っていた。2回は連打を浴び、無死一、二塁とされたが、デビッドソンを中飛、1死一、三塁からは会沢を低めのフォークで遊ゴロ併殺に料理。4回は1死一、三塁とされるも、末包は外角低めのフォークで、デビッドソンは内角直球で連続の空振り三振斬り。5回は2死から連打を浴びるも、西川を内角低めの変化球で左飛に封じた。7安打を浴びせられたが踏ん張り、無四球で得点を与えなかった。

北の大地で左腕の土台はつくられた。東海大札幌時代の1年秋から、同校の大脇英徳監督はプロに行かせるため門別にはあえて他の選手よりも練習量、質なども含め「プロで10年20年働ける選手にするために、ハードルを上げて接してきた」という。時には全体練習から外したこともあった。その間にも真冬で雪が積もるグラウンドで1人黙々と走り続け、結果的に強靱(きょうじん)な下半身を手に入れた。入学当時は130キロ台だった直球は、最速150キロまでに成長した。

球団では83年御子柴以来となる高卒新人初先発勝利を達成することはできなかったが、潜在能力の高さを示した。岡田監督は「思った以上にコントロールがよかったよな」と評価。今季の1軍戦ではラスト登板で「来年の楽しみやんか」と胸を膨らませた。「これから先はずっと1軍で投げていけるように、もっと練習したい」。まだあどけなさの残る左腕が、プロの舞台で堂々の投球を披露した。【古財稜明】

◆阪神長坂(先発門別をリード)「初登板の時から物おじせず投げている印象はある。(ピンチで)すごくよく粘ってくれた」

▼門別が5回無失点と上々の先発デビューを果たした。53年小山正明、83年御子柴進に続く阪神の高卒新人では40年ぶり3人目の初先発勝利はならなかった。5イニング以上を投げ無失点だった球団高卒新人は、56年9月28日大洋(現DeNA)戦での井崎勤也7回無失点以来、67年ぶり2人目という好投だった。

<門別アラカルト>

◆生まれ 2004年(平16)7月10日、北海道・日高町出身

◆球歴 日高町立富川小1年の時に富川野球スポーツ少年団で野球を始め、小6でファイターズジュニアに選出。富川中では軟式野球部に所属。東海大札幌では1年秋から背番号1でベンチ入り。2年秋の全道大会から3年夏の南北海道大会まで3季連続道大会4強。甲子園出場はなし

◆目標 母校の系列の東海大出身で元阪神の右腕・上田二朗氏

◆プロ初登板 9月15日広島戦(マツダスタジアム)の3回から登板し、3イニングを投げ3失点

◆持ち球 直球、カーブ、スライダー、チェンジアップ、ツーシーム、最速150キロ

◆特技 バスケットボール、スピードスケート、アルペンスキー

◆血液型 A

◆サイズ 183センチ、86キロ、左投げ左打ち、足のサイズは29センチ

◆家族 両親

■名字に「別」という漢字がつく投手

門別の前にプロ野球公式戦に登板した3人は、いずれも野球殿堂入りを果たした名選手である。別所毅彦は南海(現ソフトバンク)で89勝を挙げ、49年に巨人へ移籍。同球団在籍中の221勝は、現在も最多だ。北別府学は広島一筋で213勝を積み重ね、こちらもチーム最多。そして唯一の阪神OB別当薫は、49年に39本塁打を放った強打者だ。投手としても、阪神と移籍先の毎日(現ロッテ)で計3試合に登板。4球団で指揮を執り、監督通算1237勝を挙げた。門別も大先輩に続くか。