巨人がドラフト1位で交渉権を獲得した中大・西舘勇陽投手（4年=花巻東）はほとんど表情を変えなかった。名前が呼ばれた時も、くじ引きの瞬間も引き締まったまま。「あとは本当に待つだけと思っていた。そこでどうこうというよりは、自分が名前を呼ばれるまで待っていた」と満足感よりも覚悟がにじんだ。清水監督、樫山部長に握手を求められ、初めて少し白い歯がのぞいた。

ブルージェイズ菊池、エンゼルス大谷に憧れて花巻東（岩手）に進学。中大入学時に「4年後プロ　ドラフト1位」を目標に設定した。正月に抱負を記す色紙は4年間、「初志貫徹」で不変だった。「日々の練習もやると決めたらしっかりやる。これからも野球を続けるにあたっても、いろんなことにもつながる言葉」。入学時の初志を成し遂げた。

中大OBである阿部新監督のもとで、プロの世界に飛び込む。「自分が小さいころのレジェンド選手。すごい選手というのが印象。その方のもとで野球できるのはうれしい」と縁を感じる。中大の清水監督からも「出力の高さはどの投手にも負けていない。プロで通用するような体づくりができれば、本当に他の投手よりも成長できると思います」と期待を寄せられた。

1年目の目標はシーズンを通して1軍でプレーすること。全球クイック投法で最速155キロの右腕は「強みはランナーが出てからの落ち着きだと思っている」。動じぬ心でプロの世界で輝く。【上田悠太】

▽花巻東・佐々木洋監督　高校を卒業する前に『ドラフト1位でプロに行く』と宣言し、夢をかなえて競合の上、伝統あるジャイアンツにドラフト1位で指名を頂いたことは本当に素晴らしく、うれしく思います。中央大学で4年間、清水監督の元で大きく育てて頂きました。本人もよく頑張ったと思います。しかし、ここがゴールでなく、新たなスタートとして、世界で活躍する本校卒業生の先輩方に追いつけるよう、頑張って欲しいです。