盗塁をいかに阻止するかに着眼して里崎智也氏(47=日刊スポーツ評論家)が考案した「里崎指数」は、スタートして4年目となった。過去と比較しても、今回ほど盗塁の本質をデータで表せたシーズンはない。各球団の「投手-捕手」のデータから、おもしろい傾向が見えた。【データ担当=多田周平】

里崎氏 まず、この指数のテーマを説明します。盗塁は投手と捕手の共同作業で防げます。投手のけん制、クイックの質です。捕手が強肩でも、投手が無警戒では刺せません。

◆投球回数を盗塁の企図数で割ると、1盗塁企図に要したイニングになる。バッテリーは走者に何イニングで盗塁を企図させるか、この指標を「里崎指数」として評価基準にした。里崎指数が高いほど走者は盗塁への意欲が低く、低いほど意欲は高くなる。

里崎氏 今季、なんと里崎指数100オーバーが3組になりました。これは走者が1盗塁に要するのが100イニング。単純に9回で割っても11試合で1盗塁以下という驚異的な数字です。

◆広島「床田-坂倉」が134・67、中日「小笠原-木下」が106・33、そしてオリックス「宮城-森」が100・67。4位のソフトバンク「有原-甲斐」の38・89を大きく引き離している。床田は投げた全イニングの86%を坂倉と組み、小笠原は66%を木下と、宮城は69%を森と組んでいる。

里崎氏 ここで注目したいのは、捕手が他の投手と組むと指数は大きく変動している点です。坂倉は九里とでは24・07。実に5・5倍以上の差があります。顕著な例で言えば、甲斐は有原とでは4位に入りますが、和田と組むと12・50と一気に数字が下がります。他の捕手も見てもらえれば、投手によって数字が変動していることが理解してもらえると思います。つまり、盗塁はまず初手に投手の意識、技術が非常に大切ということです。

◆「床田-坂倉」、「小笠原-木下」、「宮城-森」の3強に至っては100イニング以上でわずか企図1度のハイレベルを誇る。それもその1度は盗塁を許してなお、圧倒的な技術力によって走者から盗塁への意欲を奪い取っている。

里崎氏 さらにデータから見ると、床田は坂倉以外では1回企図されており、同様に小笠原も木下以外では3度企図されています。しかし、宮城は全146回2/3で1度。盗塁阻止への高い意識を含め、けん制、クイックの技術は最高水準にあるとわかります。これこそが、里崎指数が教えてくれる盗塁のメカニズムです。いずれ近い将来、企図0のパーフェクトが誕生することも十分にあり得ます。