東都大学リーグ4年生の進路がほぼ決まった。日大・古本萌夏(もえか)マネジャー(4年=日大豊山女子)は、パナソニックグループへの就職が内定。野球部入部も決まった。社会人硬式野球界ではおそらく初となる、現場付きの女子マネジャーが誕生する。

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大学野球界に女性の主務が誕生するなど、アマチュア野球界にも女性進出の波が押し寄せている。古本さんは来春、社会人硬式野球チームでは類を見ない、現場付きの女子マネジャーとしても第1歩を踏み出す。「女性らしい視点。私だから見えることを、自分らしくやっていきたい」。

中学から高校まで6年間はソフトボール部に在籍した。「日大には体育会の女子野球部がなかった。きびしい環境に身を置いて自分を磨きたかった」と大学では野球部の門をたたいた。通常業務に加え、4年になると男子と女子の連携を密にして情報を共有。その他にも、自分から手伝える仕事を探した。お客さんの案内、食事の手配。OBや関係者への情報発信を活発にした。「リスクマネジメントを考えて行動できるようになりました」。

理工学部で学び、エンジニアを目指し就職活動を行っていた。そんな時、パナソニック野球部が女子マネジャーを探していると耳にした。「人生一度きり。今しかできないことにチャレンジしようと思った」。パナソニックグループには技術職もあり、野球部引退後の可能性にも魅力を見いだした。パナソニック野球部金森敬之監督(38)は「今は男性だけではない。女性の時代でもある。彼女が加わることでもっといいチームになる。僕らが見えない視点を楽しみにしています」と話すなど、期待は大きい。

先輩はいない。たった1人で飛び込む世界に、ワクワクしている。これまでと違い、事務作業はもちろん、グラウンドでの球拾いや練習の手伝いも行う。「大変なことがあれば、それ以上に楽しいことがある。それは日大で学んだこと」。

受け入れる側も準備を進めている。グラウンドに女子トイレや更衣室を新設。野球部の女子の制服も作った。古本さんの案でパンツスーツを採用。「ボタンとかちょっとかわいくしてもらいました(笑い)」と、早くも新しい歴史をつくりはじめている。

11月26日に行われた、野球部の納会でのこと。「つらいこともありましたが、それ以上に楽しいこともあり、たくさん勉強することができました」とあいさつした古本さんの頬を、大粒の涙が伝った。それは、4年間の充実感を表していた。道を切り開く人がいるから活躍の場は広がり、可能性は無限に広がる。「後輩たちのためにも、門を広げていきたい」。さわやかな笑顔が、社会人野球界に新風を巻き起こす。【保坂淑子】

◆社会人野球の女子マネ事情 社会人野球は「会社登録」の企業チームと「クラブ登録」のクラブチームにわかれ、日本野球連盟(JABA)に加盟。8月現在、会社95(専門学校11チーム含む)、クラブチーム249の計344チームが加盟する。事務作業以外にグラウンドでチーム補助を行う現場付き女子マネジャーは、クラブチームでは存在するが、企業チームでは古本さんがおそらく初となる。