東都大学野球の亜大の香田太河マネジャー(3年=博多)が新チームの主務に就任した。父は、駒大苫小牧(南北海道)監督として史上6校目の夏連覇へ導いた香田誉士史さん(52)。「チームの裏から支える存在になりたい」と意気込んだ。

02年、長男として苫小牧市に生まれた太河に、日本中を歓喜の渦に巻いた駒大苫小牧の04年夏の初優勝、翌夏の2連覇の記憶はない。「2歳のころ甲子園に連れて行ってくれたそうですが全く記憶がないんです」。父の仕事の関係で神奈川を経て12年には福岡へ。小5から野球を始めると「あの香田誉士史の息子か」と声をかけられ、父の偉大さを肌で感じた。「関係ないっすよー」と笑い飛ばしたが、心の中では「野球センスのない僕なんて…」と劣等感に押しつぶされそうだった。練習に付き合ってくれる父の期待に応えられない自分も、情けなかった。

選手として活躍できなくても、野球が好きな気持ちは変わらなかった。中学生から高校生になったころ、西部ガスのコーチだった父の隣でチームの動画やプロ野球を見るのが一番の楽しみだった。野球談議を交わす度、尊敬の念は大きくなった。「子は親を選べない。考え方を変えれば『香田の息子』は、僕の武器なんじゃないかと思うようになったんです」。選手でなくとも野球に携われる。マネジャーとして胸を張って、亜大野球部の門をたたいた。

今では父と何でも話し合える仲良し親子だ。亜大入学時、生田勉前監督(57)から言われた言葉「物事を広い目で見られる存在になれ」を胸にチームを支える。「卒業時には父に『大学まで野球をさせてくれてありがとうございました』と感謝を伝えたい」。成長の証しを、優勝という結果で示すつもりだ。【保坂淑子】