メジャーで初めて「89」を背負った男は、首に野球を宿す。ヤクルトの新外国人ミゲル・ヤフーレ(25=ジャイアンツ3A)は、右耳の下付近に「89」のタトゥーを刻む。沖縄・浦添キャンプ休養日の9日、思いなどに「潜入」した。

ベネズエラ出身の右腕は、20年3月5日にヤンキースと契約。同年8月31日に、米大リーグ史上初の「89」番の選手としてデビュー。「誰もつけていないってことは知らなかった。自分で選んだわけではなく、ヤンキースから渡された。初のタトゥーを入れるいいきっかけになった」。

8の下には契約日、9の下にはデビュー日が記されている。8、9はそれぞれ白球のデザイン。王冠がかかった十字架で二分されている。クロスは2本の弓矢で構成。「コントロールを売りにしているピッチャー」と21年に米国で入れた。

思い入れのある数字。初の日本球界でも選びたかった。だが、遅かった。昨年10月10日の時点で背番号「89」は、伊藤智仁1軍投手コーチ(53)の背中に入ることが球団から発表されていた。ヤフーレの獲得発表は、昨年12月7日だった。

契約時に残念がったヤフーレ。そのことを聞いた伊藤コーチは優しかった。「俺は背番号にこだわりないから言ってくれたら良かったのに」。改めて、その件について伊藤コーチに聞くと「来年もいたら、全然変えるよ」と優しくほほ笑んだ。一方でこだわりはないという背番号だが「そうだな。俺は吉村(貢司郎)の21番をもらうよ(笑い)」とかつて自身が背負った背番号を求めた。

くしくも89は野球とも呼べる。ヤフーレは「それは知らなかった」と笑った。「目の前のアウトを取ることに集中して頑張りたい」。ドラゴンボール好きの先発候補。「もしかしたらドラゴンボールのタトゥーを入れるかもしれないね」。精巧なタトゥー同様、緻密なコントロールで、アウトの山を刻んでいく。【栗田尚樹】

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