阪神大山悠輔内野手(29)のバットは得点の“におい”を発していた。

昨年の雄姿を知る虎党は分かっている。背番号3が振りにいくたび、場内が息をのむような雰囲気があった。

初回。2死二塁から高め直球をたたいて先制の中前適時打。前夜の強烈な1号バックスクリーン弾&今季初の3安打はやはり復活の合図だった。

「ここまで本当に迷惑というか、チームメートに助けられてしかいなかった。自分が今度は助ける番になりたいと思っていた」

7得点した2回は左犠飛。勢いは止まらない。6回1死一塁では右翼ポールの下まで届く二塁打。これまでなかった逆方向への大飛球も出た。ことごとく直球を打ち返し「直球を打ち返していくことでタイミングも合ってくる。まずはそこができてきたのが自分の中で一番いいこと」と自ら復活の兆しを口にした。

締めは7回だ。2死一、三塁から勝野のスライダーを左前へ。3安打3打点と文句のつけようがない、4番の働きだった。

下半身のコンディション不良を抱えて開幕。万全でないのは誰の目にも明らかだったが、主軸に座り続けた。「必死にやった結果かなと思います」。試合日以外も治療、トレーニングを欠かさなかった。前日から左足をほとんど上げず、すり足に近いフォームに変更。工夫も実を結んだ。さらに、前日は愛車での球場入りのルートも変えたという。大山が打てばチームが勝つ。その証明となった2試合でもある。

「チームが勝つ。これ以上のことはやっぱりない。そこはすごくいいと思うし、続けていきたい。1年間、波は必ずある。悪くなった時の戻し方を持っておくだけで全然違うと思う。悪い時こそ何かできることがあると思うので、そういうところもしっかりやっていくのが大事かなと」

苦しんだ時間は無駄にはしない。くしくもこの日は国内FA条件を満たした節目の1日。4番の本領発揮が始まった。【柏原誠】

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