阪神近本光司外野手(30)の打球は定規で測ったように真っすぐに左翼線へ伸びた。2点を追う7回2死一塁、左腕中川の初球の直球を振り抜いた。鋭いライナーがライン内側にはずむと同時に、大歓声が沸いた。実に39打席ぶりの安打。自己最長のトンネルを抜け、二塁ベース上でうれしそうに目尻を下げた。
「何とか、後ろにつなぐ気持ちでした。真っすぐをしっかり打ちにいこうと思っていました」。リズムに乗れなかった打線が、近本の二塁打を合図に動き出す。2死二、三塁から中野、森下、佐藤輝と3連続の適時打であっという間にスコアボードに4点が入った。胸のすく逆転劇だった。
「ヒットになったのはすごく安心しますけど、自分のやりたいこともしっかりできたので。その過程でもすごく、いいものがあった」。内容的にも完全復活が近い感触を口にした。
8月はベンチスタートが2度。開幕から休まず突っ走ってきただけに、コンディション不良も心配された。ただ、打撃職人は試合前のルーティンを大きく変えることなく、黙々と向き合った。走塁、打撃をこなして、最後は中堅の守備位置で打球を追う。炎天下でも構わず続けた。
7試合の長い足踏みをへて通算1069安打。入団7年目までの安打数で長嶋茂雄(巨人)にあと1本とした。近本の刻む記録の道にはいつもミスターがいる。
「その1本がすごく難しいし、いろいろな重みもある。しっかり積み重ねていきたい。(安打は)そんな簡単なものではない。そこにたまたま野手がいたりも含めて、それが野球だしバッティング。それを再認識した期間でした。優勝まで気を抜かず頑張ります」
8月31日にきっちり宿題を片付けた。もう心配は何もない。いよいよ歓喜の9月に突入だ。【柏原誠】



