<西武5-7中日>◇19日◇大宮

 パワー全開!

 中日の4番トニ・ブランコ内野手(28)が驚きの140メートル特大弾2発でチームに初の交流戦開幕星を呼び込んだ。無敗の西武先発岸から4回に9号ソロ、6回に10号ソロを放った。5月に入って打率3割9分7厘、6本塁打、16打点と絶好調だ。和田一浩外野手(36)も単独キングとなる11号2ラン。豪快な1発攻勢で今季2度目の4連勝。いよいよ逆襲の予感だ。

 どちらも相手を震え上がらせる140メートルの特大弾だった。まず4回、西武先発岸の初球スライダーをたたくと、打球は一直線に伸びて大宮球場のバックスクリーンを直撃した。さらに6回にはまたも初球チェンジアップを左翼席上部のネットに突き刺した。「ヒットの延長がホームランなんだ。最近はよくボールが見えるようになってきた」。いずれも初対戦の岸の初球に反応した。驚異のパワーを初めて目の当たりにした岸はぼうぜんとしていた。

 勝負を決めたのもブランコのパワーだった。8回、1点差としてなお三塁の場面で打席に入ると西武は3番手大沼を投入。威圧感十分のブランコに対して西武バッテリーはボール球勝負だったが、なんと大沼が制球を乱して暴投した。労せずして同点。さらに続く和田が決勝2ラン。バットを振らずに「仕事」をする姿はまさに4番だった。

 これで5月は打率3割9分7厘、6本塁打、16打点。本塁打はリーグ2位タイに浮上し、早くも月間MVPの有力候補となる活躍ぶりだ。4月は結果が出なかったが、首脳陣は日本野球に対応するための「準備期間」として我慢。ブランコ自身もスタンスをスクエアからオープンにするなど努力して、目覚めた。

 昨秋のドミニカ・ウインターリーグを視察した森バッテリーチーフコーチの目に留まり、入団に至った。巨人の若手投手らからホームランを連発したパワー以上に評価されたのが、勤勉さだ。今も本拠地ナゴヤドームでは試合後に室内打撃練習場にこもる。練習からヘッドスライディングも見せる。推定年俸2700万円は12球団助っ人の中でも最低クラス。日本での実績を売りにする新外国人が全盛の球界にあっては珍しく、ハングリーさを売りにする「発展途上型」だ。

 落合監督は初の交流戦開幕星にも「そうなの。知らなかった」と淡々としていたが、4番の上昇とともにチームは2度目の4連勝だ。「僕はボールを見て振るだけ。どこまで飛ぶかは神様が決めてくれるさ」。ブランコは遠征用バッグの中にいつも「聖書」を入れている。努力と、汗と、神様を信じる男が首位追撃の原動力となる。【鈴木忠平】

 [2009年5月20日11時6分

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