<楽天8-2ロッテ>◇20日◇東京ドーム

 中堅に到達した高速ライナーを見届けると、楽天の山崎武司内野手(42)は下を向き、不振脱出の光明をグッとかみしめた。同点の5回2死満塁。4番が決勝2点適時打。「打率2割よ、2割。(感触を)肝に銘じてやらないと。続けて明日よ」と、殊勲打の感想より先に翌日を見たのが、責任を背負い込む山崎らしかった。ロッテの20歳の右腕唐川を41歳のバットで砕き、楽天は借金を6とした。

 元来スロースターター。だが旗振り役を自任する今季は、春先の不振がこたえた。若手練習に参加した前日。「(後楽園遊園地の)ジェットコースターにでも乗ろうかな。やること全部やってこれでだめなら…、もう引退だな」となげいた。今季の引退宣言は、もう片手では収まらないほど。顔は笑っていたが寂しそうだった。

 ブラウン監督と車座で30分も会談し、正座で聞いた「相手じゃない。自分の打撃に徹して」との助言がしみた。「詰まるとか開くとか、いろいろあるけど。センターに届いてくれたよ」。外角球に反応し、左手1本で捕まえた決勝打。唐川を吹き飛ばしたライナーは山崎本来の打撃だった。

 球団創設6年目で初の東京ドーム主催試合を完勝。4万人を突破した関東の楽天ファンに加え、三木谷会長を筆頭に大挙して押しかけたVIPもひとまず安心させた。「1つ1つ白星を重ねて。東京から応援、よろしくお願いします」。細い目をさらに細くした人懐こい笑顔で、4番はお立ち台を締めた。【宮下敬至】

 [2010年4月21日9時44分

 紙面から]ソーシャルブックマーク