<日本ハム5-0西武>◇1日◇札幌ドーム

 日本ハム・ダルビッシュ有投手(23)が今季初の完封で、チームにも今季初の3連勝を呼び込んだ。今季3度目の対戦になった西武打線対策としてスタイルをチェンジ。4奪三振ながら、16個のゴロアウトを積み上げた、打たせて取る投球でわずか6安打と寄せ付けなかった。これで江夏豊氏以来となる、高卒1年目から6年連続の完封勝利をマーク。今季最多150球での記録的なシャットアウト劇で、5月反攻のエネルギーを注入した。

 アドリブで変身しても、圧倒した。ダルビッシュが、創意工夫で9個の「0」を並べ切った。開幕から奪三振マシンのように「K」を量産してきたが突如、ゴロキングへとなりすました。内野ゴロは16個。才能が詰まった、多才の右腕は新たな一面を見せ、したたかに笑った。「目標が15ゴロだったんですけれどね。それくらいいければなぁ、と」。自分自身の想定を超える会心マウンドになった。

 試合前のひらめきが、もう1人のダルビッシュを発明した。西武とは今季3度目の対戦。前回4月17日は打線の援護に救われて白星につながったが、自身プロ入り初の1イニング5失点を喫した。「西武ほど力のある打線なら、最初の2回は抑えられるけれど、3回目は絶対にとらえられる」。通常はプレートの三塁側に立つが、この日限定で一塁側へと変えたのが、快投ショーの始まりだった。

 強振してくる好打者が多い西武打線。目先と同様に、組み立ても変えた。「フォーシーム(直球)は2、3球くらいかな」。直球系のツーシームを自在に操る。右打者の外角へベース板をなぞるように決め、左打者の外角へはシンカーのように沈ませ、凡打を誘った。同じような小さな変化のカットボールも多投。試合のリズムをつくるために打たせて取り、打線の援護を誘発した。

 新スタイルに、柳田球審も面食らったのか。きわどいコースの判定が厳しかったが、丹念に150球を投げ切った。プレート位置を変え「景色が違って、ちょっと変な感じがした」という違和感も、笑いながら「本当に疲れましたね」と言える充実感で補えた。西武戦は3戦3勝。江夏氏以来となる、高卒1年目からの6年連続完封という、おまけの快挙が、苦心のマウンドを彩った。

 どん底に沈むチームへ、今季初の3連勝をプレゼントした。過密日程の9連戦のちょうど中間地点の5戦目で、中継ぎ陣へ休息まで与えるエースらしい仕事だった。苦悩が晴れない梨田監督は「一番、大変な時に1人で投げ切ってくれた」と感謝した。防御率は再び、1点台へ突入。始球式を務めたロンドンブーツ1号2号の田村亮が「あんなすごい球を投げる人の横で申し訳ない」と恐縮したのも、うなずける。いつもと違うオーラを出し、ダルビッシュは、また見下ろした。【高山通史】

 [2010年5月2日10時27分

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