鉄人打法で1軍デビューだ。広島2年目・堂林翔太内野手(19)が、昨年から通う広島市内のジムでの自主トレで、阪神金本知憲外野手(42)のティー打撃のトス役を務めてそのすごみを間近で目撃したことを明かした。「軸足が全く動かない」と感激。目標の1軍昇格へ、課題の下半身強化の教科書にする。

 最高のお手本が、わずか1メートルの至近距離にいた。広島市内のジムで汗を流していた年明けのこと。他の選手にティー打撃のトスを上げていた堂林の前に、金本が立った。他球団とはいえ、球界を代表するスラッガーにトスを上げることで、そのすごみを直接体験できたという。

 「いい打者ほどトスを上げやすいんですが、金本さんはすごかった。軸足がまったく動かないので、スイングの軌道が変わらない。今までたくさんの人にトスを上げてきましたけど、金本さんはその中でも一番違う感覚でした」

 金本は右肩痛のため、ティー打撃は30球程度で終わったが、堂林にとっては至福の時間だった。自身の課題が「下半身の強化」にあるからだ。目を見張る金本の下半身の安定ぶりは、堂林には驚きだった。

 新人だった昨季、2軍で100試合に出場した。だが、秋季キャンプでは新任の町田打撃コーチに下半身の弱さを指摘され続けた。将来の主砲として期待される男は、パワーアップを目指し、筋力トレーニングで下半身を強化する道を選んだ。

 「鍛えないと飛距離も出ないし、スイングスピードも上がらないですから」

 秋季キャンプ後、金本が広島時代から通うジム「アスリート」に日参するようになった。年末年始以外は毎日のように出向いた。

 トレーニングの成果は着実に表れている。体重は昨季より5キロ増え、この日、廿日市市内の大野室内練習場で一緒に自主トレした中京大中京の後輩・磯村も「肩や足腰が高校時代よりも大きくなっていました」と驚く。なにより自分自身が「ティー打撃をしていても下半身がぶれない。秋季キャンプのときとは全然違う」と実感している。

 金本の鍛え上げた肉体は最高の教科書だ。それを間近に見て体感した堂林は、自らが取り組んできたことに間違いがないと確信した。「2軍で安定した数字を残し、だれもが大丈夫と言ってもらえるぐらいになって1軍に上がる」。鍛え上げるほど目標は近づいてくる。【高垣誠】

 [2011年1月17日11時8分

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