<オープン戦:巨人1-1楽天>◇20日◇那覇

 引き分けからのスタートになった。楽天の星野仙一監督(64)は、初の対外試合となる巨人とのオープン戦に臨み、1-1で引き分けた。セーフティーバントで相手のミスを誘い、機動力を生かしながら3球で同点に追いついた。キャンプ後半で精彩を欠いたルイーズ、片山らの危機感を前面に出したプレーが随所に出た。好機で1本が出ない課題も出たが、チームの「今」を把握し、適切な言葉と登用で束ねていく星野流の指導哲学が初陣から垣間見えた。

 攻撃では身を乗り出し、守備時はどっかと腰かけ動かなかった。ベンチでオンオフを切り替えながら、星野監督は淡々と指揮を執った。試合が進むにつれ「点取ろう!」と自然に声が出たが、言葉を荒らげるわけではなかった。初陣後の一声は「適度な緊張とこれだけの声援の中、巨人と、試合をできたことが収穫。打者が相手の術中にはまった。打席での読み。訓練しなくては、と教えてくれた」。巨人への感謝だった。

 「闘将」「鉄拳制裁」のイメージは、もはや適当でないかもしれない。経験を重ねることは、同時に、現場との年齢差が離れていくことでもある。「40、50、60代で指導のスタイルは違う。兄弟、親子の関係のように置かれる状況が変わる。時代とともに変わるのは当たり前」。両軍入り乱れた場面では先頭に立ち、巨人王監督につかみ掛からんばかりに立ち向かった中日時代。優勝を決めたサヨナラ打を放った赤星を抱き締めた阪神時代。楽天星野仙一監督はまた違う。今、監督業をこう定義している。

 星野監督

 会社の社長が各部署に直接来て、自分から指示を出すことは一般的にない。口を出すことで気を使ったりして、動きにくくなる人間が出る。まずは部下を信頼すること。自分は気が付いたことを指摘すればいい。

 走攻守の実務は担当コーチに基本任せる。自身はより大局からチームを洞察し、今必要な言葉を最小限伝える。

 キャンプ終盤、疲れの見えた片山には「巨人のベンチにあいさつに行って、そのまま帰ってこなくてもいいんだぞ」と言い「新聞の1面、飾ろうや。お母さんが喜ぶ」と続けた。拙守のルイーズについて「何とかしろ。オレは使わないぞ」とコーチを叱咤(しった)し、久米島のカフェで1人落ち込む助っ人を「大丈夫かな…。いつも1人でいるな」と心配もする。だが「気落ちする選手は認めない」と、冷静な判断基準も併せ持っている。

 くさびを打った上で人材登用する。ルイーズを4度打席に立たせた。安打で出塁した第4打席。4番は捕手の手前で弾んだボールを見逃さず二進。ヘッドスライディングで陥れた。試合中唯一、いい笑顔を見せた場面だった。片山は3回無失点。「ま、いいでしょう」としたが与えた刺激が結果に出た。

 昨年最下位の理由はキャンプで把握した。だから、得点圏に5度走者が進んだが1得点の結果に驚きはなかった。会見は「もっと勝ちにこだわらなくては。いやらしい野球をやらなくては。守備、走塁、バントはやってくれたが、打撃は向こうのピッチャーにはまっていた。そこが反省点だ」で終わった。本番までの命題を課した。【宮下敬至】

 [2011年2月21日9時10分

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