阪神がパ・リーグへの全面バックアップを約束した。東日本大震災の影響で楽天やロッテが被災したことを受け、南信男球団社長(56)は14日、パの試合や練習での甲子園球場を貸し出すプランを提案。公式戦収益を12球団に分配することや、独自の震災チャリティーを企画し、甲子園などに募金箱を設置する考えを明かした。

 16年前に阪神大震災を経験した被災球団として、阪神は楽天やロッテの混乱を深刻に受け止めていた。特に震度6強の地震が襲った仙台は深刻な状況にあり、南球団社長は「甲子園が空いている時は使ってもらえれば」と言葉を絞り出した。仙台などで公式戦開催にメドが立たない場合、甲子園を貸し出す。星野楽天の主催試合球場として提供するプランを提案した。

 震災による球場損壊や交通機関の不通。関東では計画停電も予定されるなど、現状のままでは開催が困難では、と思いやった。

 「こういう時は12球団みんなで助け合わないといけない。ウチは選抜が終わったら何も問題はないから」。

 選抜高校野球の終了後で、既に組み込まれた阪神の公式戦以外の日なら支障はない。そのための練習場所も確保する。たとえ甲子園が無理でも「神戸や明石でもできる」とも力説。フランチャイズを置く兵庫県下全球場での開催にも、全面バックアップを約束した。

 阪神は15日の臨時実行委員会で、予定通り公式戦を開催してはどうかとの考えを示すもようだ。沼沢球団本部長は「もちろん被災した当事者のことを思うのは大原則です」としながら、苦渋の表情で言った。

 「試合のできるところまで全部を中止にしてしまうと、日本経済を停滞させてしまい(日本中すべてに)得策ではないのでは」。

 球団は各球団が開催した公式戦の収益を、楽天やロッテをはじめ、12球団に平等に分配する提案も検討。また、その収益を被災地復興の支援金に充てる案も温めている。公式戦を開催する方が生産性が高く、復興への一助になるのでは、との見方だ。そのためには甲子園球場の貸し出しも含め、全面協力は惜しまない。

 阪神大震災では、甲子園球場も一部が損壊し、日本中のファンや他球団など各方面から手厚い支援を受けた。当時の感謝も込め、少しでも恩返ししたい思いは強い。主催公式戦では、甲子園などに被災地義援の募金箱を設置する予定。球団独自にチャリティー活動を開催することも検討に入った。実行委員会では、楽天やロッテをはじめ、パ・リーグの思いに耳を傾ける。そして現状のベストを提案、模索する。【松井清員】