<西武1-0日本ハム>◇28日◇西武ドーム

 まさか?

 の完封劇だった。西武西口文也投手(38)が05年8月27日以来、実に6年ぶりの完封勝利を挙げた。日本ハム相手に9回3安打10奪三振の快投。4回以降は1人の走者も許さず、三塁を踏ませることはなかった。06年6月4日を最後に、先発として102試合連続完投なしの珍しいプロ野球記録は途絶えたものの、チームトップタイの6勝目。近年の不振から復活をとげつつあるベテランの奮闘が、最下位チーム浮上の原動力となるか-。

 “懐かしい”9回のマウンドに浸る間もなく、西口はあっさりと3人で締めた。試合後は「久々すぎて疲れました」と言いつつ、余力十分。この日最速となる144キロを連発し、前人未到102試合連続完投なしの記録に美しくピリオドを打った。2ケタ奪三振も5年ぶり。「記録が途絶えたのは悔しいですけど、完封できたのはうれしい」。ちょっとだけ交じっていたかもしれない複雑な思いも、痛快な笑いに変えた。

 すべての球種で苦もなくカウントを稼いでゲームを支配した。球威十分の直球に代名詞のスライダー、ウイニングショット・フォーク。そして、無欲にイニングを重ねた。「若い時は完投したいというのもあったけど、今思うのはまず5回。自分の現在の力で勝っていこうとしたら、短いイニングに集中していった方が確率が高くなる」。先発完投型エースとして一時代を築いた右腕が勝ち続けるために踏み切った、意識のモデルチェンジ。8回終了後に「自分で(記録に)終止符を打ってきなさい」と背中を押した渡辺監督も「言うことなし」とたたえた。

 2軍でくすぶっていた昨年、復活への足掛かりにプロ生活で初めてウエートトレーニングを取り入れたのは有名な話。二人三脚で取り組んだ南谷コンディショニングコーチからは「斎藤隆のようになってほしい」と思いを託された。同コーチが指導したこともあるブルワーズの現役メジャーリーガー。40歳を超えてなお進化を続ける男のように、西口は今再びマウンドで輝きを放っている。

 ひとつの記録は終わりを迎えたが、モチベーションはがぜん高まる。これで通算172勝。「まだまだ先のこと」とかわした、200勝という大目標がある。134球を投げ抜いた心地よい疲労感とともに、次なる金字塔への歩みが始まった。【亀山泰宏】