さらば、イーグルス-。楽天山崎武司内野手(42)が9日、今季限りで楽天のユニホームを脱ぐことを表明した。球団から来季のコーチ就任を要請されたが、現役続行を選択。自由契約とすることを申し入れ、この日、了承された。創設から7年間、新興球団を支え続けた大黒柱がチームを去る決断をした。今日10日、ロッテ戦(Kスタ宮城、午後1時開始)で楽天最後のプレーを見せる。

 涙が、にじみ出た。「若ければメジャーも目指したかったけどね」。会見で、そんな冗談も飛ばした山崎の顔が一変した。「仙台のファンに」と問われ「……」。数秒、押し黙った。感情を抑えられなくなった。

 山崎

 いい夢、見させてもらいました。

 目は赤かった。オリックスを戦力外となり、05年に単身、東北へ。できたばかりの楽天に、仙台に、新たな人生を懸けた。「みんなに、ありがとう。間違いなく僕の野球人生の中で、仙台に来て良かった」。

 誰もが認める金看板。25年目の今季は、中日にプロ入りした87年当時の星野監督と再び巡り合った。2年ぶりのCS出場を旗印に挑んだ。「3月11日に東日本大震災。『底力』を出そうとしたが…。自分なりの責任をとらないといけない。ユニホームを脱いで、おわびしたい」と頭を下げた。

 出だしは良かった。開幕から不動の4番打者。だが6月11日の中日戦で右手薬指を剥離骨折。約1カ月後に復帰したが、打撃に微妙な狂いが出始めた。9月後半は極度の不振で、ここ9試合は不出場。来季構想が進む中「最大の功労者」と評する球団からコーチ就任を要請された。一時は引退も考えたが「息子が泣いてすがって。親として、やり遂げる姿勢を見せないといけない」と決意した。

 山崎

 自分の中の火を消せなかった。ギャンブルだけど挑戦して納得したい。

 星野監督らチームには、この日の試合前に伝えた。球団から、19日の今季最終戦までのプレーを求められても「チームのラストゲーム。水をさせない」と固辞。今日10日を最後とする。「正直、このユニホームで、まだ…。残念ですね」とも言ったが、前に進む道を選んだ。「体が大丈夫なら、まだやれる」。他球団のオファーを待つ。希代のスラッガー、山崎武司。そのバットで、次のステージを切り開く。【古川真弥】