<パCSファイナルステージ:日本ハム3-2ソフトバンク>◇第1戦◇17日◇札幌ドーム

 日本ハムは、「栗山采配」が的中して逆転発進した。ソフトバンクとのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第1戦は、7回に2点を先行される劣勢ムード。しかし、直後に糸井嘉男外野手(31)の右越え2ランで追い付き、さらに2死一、三塁から代打の切り札・二岡智宏内野手(36)の右前適時打で勝ち越した。ベテランがここぞの場面でCS初采配となった栗山英樹監督(51)の期待に応え、3年ぶりの日本シリーズ進出へ大きく前進した。

 選手に飛ばしたゲキを、栗山監督も実行に移した。「結果は別にして、思い切りやってくれ」。試合前、多くの報道陣も見守る中で全選手を集めて行った訓示。自身も、それに従った。同点に追いつき、さらに2死一、三塁と押せ押せの7回。ホフパワーに代え、切り札二岡を打席に送った。

 勝負どころと読んで下した決断が的中した。右前へ決勝打が転がった。「よく打ったよね。感動しました。(現役時代に)自分が代打でいっても打てる気がしなかったもん。尊敬する」。CSの行方を大きく左右しそうな、土壇場の逆転劇だった。

 準備を怠らない二岡の「職人技」に、指揮官は「みんなにも見せてあげたいよ」と最敬礼する。シーズン中同様、二岡はこの日も5回を終えると、ベンチから姿を消した。指にテーピングを巻き、鏡の前でバットを振る。刻一刻と近づく、出番だけを見据える。「(起用される場面は)だいたい分かります」。遠くに聞こえる歓声を耳に、スイングルームでイメージを膨らませる。

 描いた通り、勝負は一瞬だった。森福の初球139キロ直球系を、右前にはじき返した。「(森福とは)シーズン中に何度もやった。イメージはありました。ギリギリのところで使っていただいている中で、今日は打てて良かった」。ベース上では両手をたたいて喜んだ。「まだ初戦なのに、あんなに喜んじゃいけなかったかな…と。反省しています」。お立ち台では、自戒トークで笑いを誘った。

 シーズン終盤、栗山監督は「選手には無理をさせた」と言い続けた。二岡も、そのひとり。太もも裏やふくらはぎなど、下半身は慢性的な痛みに悩まされ、常に不安がつきまとう。試合前の打撃練習を回避して、出番に備えることも多い。疲労がたまれば、患部への負荷は大きくなる。遠征地での休日は、極力体を休ませることに努めてきた。ホテルの狭い部屋、“相手”になるのはテレビだけ。「初めて国会中継を最初から最後まで見ちゃったよ」と苦笑いするが、すべて、グラウンドで結果を出すためだ。

 投手陣、スタメン、ベンチの力を結集し、敗色ムードをうっちゃった。栗山監督は「みんなが諦めないでよく頑張った。心のつながりを感じて、それがすごくうれしい。先のことは考えない。また明日、全員で全力を尽くす」。一瞬一瞬を、思い切りいくだけだ。【本間翼】

 ▼日本ハムがアドバンテージ1勝を加えて2勝。過去に日本シリーズ出場をかけたプレーオフ、CSで「2勝0敗」は、3戦先勝のシリーズで8度、4戦先勝のシリーズで5度あるが、過去13度はすべて日本シリーズに進出。日本ハムが有利となった。

 ▼代打二岡が7回に勝ち越し打。プレーオフ、CSで代打が勝利打点を記録したのは、73年相羽(南海)81年加藤(日本ハム)82年大田(西武=2度)04年犬伏(西武)09年脇谷(巨人)10年福浦(ロッテ)11年飯原(ヤクルト)に次ぎ8人、9度目。今季の日本ハムは公式戦の代打成績が打率2割7分3厘、7本塁打、35打点。代打が記録した打率、本塁打、打点はすべてリーグ1位。二岡を筆頭に頼りになる代打がそろう。